第10章364話:図鑑

翌日。


朝。


朝食後、私は屋敷の自室にいた。


ベッドのふちに腰掛こしかける。


本を読んでいた。


図鑑である。


人魚石、もとい【人魚の秘宝】の用途について調べようと思ったのだ。


手持ちの図鑑をチェックすれば、どこかに記述があるかもしれない。


「……」


図鑑をめくる。


この図鑑は、ルフシャ砂漠国さばくこく褒賞ほうしょうとして受け取ったものだ。


ビルギンスを倒し、ヒニカさんから授与された素材図鑑そざいずかん


上巻と下巻に分かれている。


どちらも300ページほどあって、極めて分厚ぶあつい。


とりあえず私は、上巻を速読そくどくで素早く読んでいく。


砂漠国で得た図鑑なので、砂漠で得られる素材の情報が多い。


――――2時間後。


(上巻には書かれていないね)


と、上巻を横に置いた。


下巻を読み始める前に、ベッドから立ち上がって、軽く体操をした。


さすがに2時間もじっと読書をしていると、身体がかたまる。


ストレッチをしたり、軽く筋トレをして、固まった身体をほぐしてから、私は下巻のチェックに取りかかった。


「……」


ふたたび無言で読み始める。


速読で、パパッと読んでページをめくっていく。


下巻は、上巻と違い、砂漠以外の素材について書かれていることが多い。


海の素材。


渓谷の素材。


竜の素材。


怪鳥の巣に隠された素材。


それらの素材から作れる錬金アイテム。


うーむ。


面白い。


普通に読んでるだけでも楽しいぞ。


そして。


52ページに差し掛かったとき。


「あ……あった」


と私は声を漏らした。


人魚に関する記述だ。


52ページに書かれているのが【人魚の鱗】。


53ページに書かれているのが【人魚の石】。


(人魚の石……たぶん、これかな)


私は人魚の石に関する記述に目を走らせる。





◆◆◆

【人魚の石】

人魚の魔力が結晶化したもの。

湖の底でまれに発見されることがある。


人魚が長く定住した湖にしか産出されない。


人魚をおびやかしたり、いじめたりした場合、魔力がよどみ、湖底こていの石は砕けるとされる。

逆に言えば、人魚の石は、その湖で人魚が穏やかに暮らした証拠である。

ゆえに人魚にとっては、幸運の石、幸福の石、平穏の石などとも呼ばれることがある。

また伝承によっては、人魚の秘宝とも記され、実はこれが正式名称であるという説もある。


この石の用途としては【人魚の指輪】の製作に使用することができる。

(人魚の指輪に関する記述は、次のページを参照すべし)


◆◆◆

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