第10章357話:手合わせの決着

苦戦の表情を浮かべる姉上。


私は連撃をおこない、姉上をさらに追い詰めていく。


こういうとき、姉上がおこなう行動は決まっている。


まるでかつを入れるような、劣勢をはじき返すような、強力でしなやかな一撃を放つ。


「……ハァッッ!!」


あんじょう、姉上がとびきりキレのある斬撃を放ってきた。


防御が雑になるかわりに、その一発で形勢を逆転させようとするような乾坤一擲けんこんいってき


追い詰められたときに、こういうキレのある斬撃を出せるところは、姉上の剣術センスの高さを感じさせる。


だが……


(今の私なら、対処できる)


昔の私なら手も足も出なかった。


でも、攻撃パターンをシミュレーションできる今の私は、姉上がどこにどう攻撃を放ってくるのか事前に予測できた。


だからジャストなタイミングで姉上の攻撃を受け……いなした。


「!!?」


姉上が驚愕の色を示す。


私はそのまま姉上に斬撃を放つが、これは姉上が回避する。


しかし二撃目にげきめ


私が放った追撃が、姉上の首をとらえた。


「……!!」


姉上の動きが止まる。


私の木剣のさきが、姉上の首筋に向けられている。


勝負アリ、だ。




「「「オオォォォオ!!」」」




と周囲から声が挙がった。


アリスティがぱちぱちと小さく拍手している。


「参ったわ。まさか……私がこんなにあっさり負けるとはね」


と姉上が驚きの色を含ませつつ、微笑んだ。


私は剣を下ろす。


姉上も剣を下ろした。


「手も足も出なかった。本当に強くなったわね、エリーヌ」


「……ありがとうございます。久々に姉上と仕合しあいができて、楽しかったです」


「私もよ」


と姉上が応じた。


戦闘終了のあいさつとして、互いに握手を交わす。


同時に、兵士たちがいた。




「強え!」


「ローラ様をあんなふうに追い込むなんて」


「エリーヌ様って、こんなに剣の腕がご達者だったのか」


「ローラ様は手加減なされたのか?」


「何を見てたんだ? どう見ても本気だっただろう」


「すごいものを見たな」




賞賛の声。


さきほどの戦いを分析する声もある。


姉上が言った。


「じゃあ、手合てあわせはこれぐらいにして、宴に戻りましょう」


「はい」


と私は応じる。


かくして私たちは、宴を再開するのだった。



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