第9章354話:戦の終結

このあと、私はさまざまな報告を姉上におこなった。


セラス、およびリシアを討伐したことなどを告げる。


「そう。リシアを倒したのね」


「はい。これで兄上にまつわる全てが終わりました」


ブランジェ家の支配体制におびえたブロストン侯爵。ドラレスク将軍。


フレッドの復讐として私を殺そうとしたリシアとセラス。


それらは全て、兄上が残した負の遺産であったが……


この戦争の終結をもって、何もかもが清算された。


ブランジェ家をおびやかす者は、当面、いなくなるだろう。


「旅に出てからのあなたは、見違えるほど成長したわね。いったいどんなことがあったら、そこまで変われるのかしら」


うーん……


それを話そうとすると、転生のことも話さなければならない。


私が転生者であることは、アリスティには教えたが……本来なら、知る人は少ないほうがいい。


なので、適当に答えておこう。


「語ることなんてあまりないですよ。私は、錬金魔法に秘められた可能性に気づいただけです」


すると姉上は神妙な顔つきをする。


「錬金魔法……か。あなたの戦いぶりを見ると、錬金魔法にはとんでもないポテンシャルがあるのでしょうね。今回の戦で、錬金魔法の研究が極めて重要であると理解したわ。私だけじゃなく、この戦争について聞いた全ての人間が、そう思うでしょう」


ふむ……


そうか。


まあ、錬金魔法の価値が理解されるのは、錬金魔導師である私からすれば喜ばしいことだ。


それにリズニス王国は、錬金魔法に関する研究の重要性には気づいている。


ならばランヴェル帝国も、同じように錬金魔法の研究に打ち込み、王国に遅れないようにすべきだろう。


「とにかく、戦争はこれで終わり。勝利の宴には、参加してくれるわよね?」


と姉上が尋ねてきたので、私はうなずきながら答えた。


「ええ。そのつもりです」


「なら、あなたのために最高級の食事とお酒を用意するわ。楽しみにしていてちょうだい」


おお。それは素直に楽しみだ。


今回は、大仕事を終えたような気分だし、姉上が用意してくれる美酒びしゅを存分に楽しませてもらうことにしよう。





さて、ほどなくして。


ブロストン侯爵が、降伏宣言をおこなった。


正式にブロストン軍の敗北が決定する。


戦場には、ブランジェ軍の歓喜で満ちあふれた。


この戦争の結果は、ランヴェル帝国の貴族社会や軍部ぐんぶに多大な衝撃をもたらし……


落ちぶれかけていたブランジェ家が、ふたたび躍進やくしんするきっかけになるのだった。





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