第9章346話:アリスティの思惑

しかし。


「!!??」


そのとき、アリスティの両肩りょうかた両腿りょうももから血が噴き出した。


またしてもキスフィールの透明攻撃とうめいこうげきが炸裂したのである。


「『浅はか』の一言ね」


とキスフィールは言い、さらに続けた。


「あなたの戦闘のじくは打撃。だから打撃以外は全てブラフ。バカは騙せても、あたしには通用しないわよ」


得意げに笑うキスフィール。


だが。


「……」


アリスティもまた、ひそかに微笑みを浮かべていた。


傷つきながらも、アリスティはみぎのひらの中に隠し持っていたもの投げつける。


「!?」


それは石だ。


さきほど地面を砕いたときに、ひそかに拾って、手のひらの中に握っていたのである。


アリスティの一連の攻撃は全て、この手のひらにある石をキスフィールにぶつけるためにあった。


アリスティが投擲とうてきした飛礫つぶてが、近距離からキスフィールへと迫る。


至近距離からの攻撃で、しかも意表を衝かれる形であったため、キスフィールは回避できず、直撃した。


「がはっ!!?」


キスフィールの全身に、石や小石が激突する。


アリスティの豪腕ごうわん超魔力ちょうまりょくによって投げられた石たちは、ほとんど銃弾じゅうだんとさしつかえないほどの威力を持っている。


それが直撃すれば、キスフィールとて無事では済まない。


そして、その隙に。


「……ッ!!」


アリスティはドラレスク将軍へ迫った。


今度は左手に隠し持っていた石を、ドラレスク将軍へと投げつける。


「むっ!?」


ドラレスク将軍がやむをえず退く。


アリスティはアイテムバッグのもとへ辿り着いた。


「『打撃以外は全てブラフ』なんて、勝手に決め付けるのはやめてもらえますか。そんなこと、一言も言ってませんよ」


そういいながら、アリスティはアイテムバッグを拾い上げた。


石を食らったキスフィールは、ところどころに怪我を負い、出血している。


額からも血が流れて、ほおをつたう。

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