第9章344話:毒

六傑の暗殺家、キスフィール。


しかも第四席だいよんせきであり、アリスティより上位の六傑だ。


キスフィールと戦うのは、アリスティであっても厳しい。


単純な戦闘能力だけでなく、透明化の能力もあるからだ。


おまけにドラレスク将軍もいる、2対1の状態。


アリスティの勝ち目は限りなく少ないだろう。


しかし。


アリスティには、エリーヌからもらったスパーク爆弾がある。


一定いってい範囲はんいないに放電を発生させるスパーク爆弾。


これを使えば、キスフィールもドラレスク将軍もまとめて感電させることができる。


アリスティは、すぐさまアイテムバッグからスパーク爆弾を取り出そうとして――――


「!?」


そこで気づく。


アイテムバッグが、ない。


アイテムバッグを引っ掛けていたひもが切られていた。


そのときキスフィールが言ってくる。


「あなたのアイテムバッグは、そこよ」


「!!」


キスフィールが示唆しさした場所に、アリスティのアイテムバッグが落ちていた。


おそらく、キスフィールの透明攻撃によって、紐を切られたのだろう。


(……やられました)


アリスティは歯噛はがみする。


――――戦闘では相手のアイテムバッグを狙うのは基本である。


狙う、といっても、アイテムバッグ自体は破壊するのが難しいオブジェクトなので、紐などを狙ってドロップさせるのが定石じょうせきだ。


だからほとんどの戦士は、相手のアイテムバッグを狙いつつ、同時に、自身のアイテムバッグを守りながら戦闘する。


アリスティも当然、アイテムバッグの防衛には注意を払っていたのだが……


相手は透明攻撃とうめいこうげきをあやつるキスフィール。


いくら注意しようとも、意識の外から予期よきせぬ攻撃が飛んでくる。


アリスティ自身、いつキスフィールからアイテムバッグの紐を切られたのかわからなかった。いつの間にかやられていた。


……とにかく、早くアイテムバッグを回収しなくてはいけない。


そう思ったアリスティは、すぐさまアイテムバッグに飛びつこうとする。


が。


「させるか」


と立ちはだかるドラレスク将軍。


「くっ……!」


ドラレスク将軍にはばまれて、アリスティは歯ぎしりした。


そのとき。


「……!!?」


ふいにアリスティから、膝の力が抜ける。


次いで、気分の悪さが一気に込み上げてくる。


突然の体調不良たいちょうふりょうに困惑するアリスティ。


キスフィールが不敵な笑みを浮かべながら告げた。


「毒がいてきたわね」


「毒……!?」


「そうよ。あたしの短剣にはすべて毒があるの。知らなかったかしら?」


キスフィールがチェーンを持って、短剣を見せびらかす。


見た目には毒がってあるようには見えない。


どくではなく、おそらく毒属性どくぞくせいが付与されている【毒剣どくけん】なのだろう。

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