第9章341話:将軍の本気

高速でぶつかった槍戦士やりせんしと魔術師。


人間同士があの速さでぶつけられたら、ひとたまりもない。


二人とも意識不明いしきふめい重態じゅうたいだ。


「……」


2名を撃破したアリスティ。


そこからアリスティは怒涛どとうの勢いで、敵を撃破していく。


「ふっ!!」


間合いを詰めてからのパンチ。


「!!」


斧戦士おのせんしは回避する。


しかし。


続く二撃目のかんが炸裂する。


「ごばぁっ!!?」


斧戦士の腹に当て勘のパンチが突き刺さる。


吹っ飛んでいく斧戦士。


さらにアリスティは、3人居並いならぶ戦士たちに、


三撃目、


四撃目、


五撃目と、


なんと連続の当て勘パンチを繰り出し、あっという間に撃破した。


「こ、これがアリスティ・フレアローズ……」


と7人目の戦士が驚愕する。


そこにアリスティが接近する。


「退避せよ!!」


とドラレスク将軍が慌てて命令した。


戦士はバックステップで距離を取ろうとするが、そのときアリスティが急に加速し、戦士に迫った。


「ひっ……!!?」


戦士の顔が恐怖に歪む。


その顔にアリスティのパンチが迫る。


当て勘のパンチではなかったが、恐怖に身をすくんでいた戦士は、モロにパンチを食らってしまった。


ズガァアンッ!!


……と。


とても人間の顔を殴りつけた音楽とは思えない、爆発音ばくはつおんのような轟音ごうおんを響かせて、戦士の顔面が粉砕する。


もちろん、即死である。


「……ッ」


仲間を全てやられたドラレスク将軍。


険しい顔つきで、アリスティを見つめる。


アリスティは、ドラレスク将軍に向かって、言った。


「あとはあなた一人ですね」


「ああ……」


ドラレスク将軍は肯定しつつ、言った。


「どうやら、全てをけて挑まねばならぬようだ。これだけは使いたくはなかったが」


次の瞬間。


ドラレスク将軍の身体に闘気とうきがみなぎった。


何かをやるつもりだ、と思ったアリスティは、早々に決着をつけるべく、ドラレスク将軍を殴りつけようとする。


しかし。


「ふんヌッ!!!」


ドラレスク将軍が激しくりきむ。


次の瞬間。


ドラレスク将軍の身体から波動のようなものが放たれ、アリスティは弾き飛ばされた。


「!!」


アリスティがバックステップで、いったん距離を取る。


ドラレスク将軍に大きな変化があらわれていた。


もともと熊のような体格だったドラレスクの身体が、1.5倍ほどに肥大化ひだいかしている。


筋骨隆々きんこつりゅうりゅうの肉体がさらに巨大化きょだいかし、筋肉がはちきれんばかりに膨張している。


「これが、わが家に伝わる秘技ひぎ―――【死闘状態しとうじょうたい】だ」


「死闘……」


「反動で死に至ることもある技。ゆえに実戦では使うことを控えていたが……貴様が相手では、そうも言ってられん」


とドラレスク将軍が、アリスティを睨みながら告げた。


「これが正真正銘しょうしんしょうめいの全力だ。受けてみよ、アリスティ・フレアローズ」


ドラレスク将軍が大剣を構える。


その戦闘体勢せんとうたいせいから立ちのぼる闘気。


鬼や竜が放つようなオーラ。威圧感。


恐竜―――という異名いみょうを持つドラレスク将軍の、真の姿だ。


アリスティは、不敵な微笑を浮かべた。


「望むところです」


そうしてドラレスク将軍との、熾烈しれつな対決へと身を投じるのであった。

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