第9章340話:アリスティの戦い2

アリスティは、斧戦士を蹴り飛ばそうとするが。


「ドラァアアアアッ!!」


そこにドラレスク将軍が迫り、ふたたび大剣だいけんぎ払ってくる。


アリスティが即座に蹴りのモーションをキャンセルし、バックステップで退避する。


しかし後退するアリスティへ、将軍配下しょうぐんはいかの魔導師が炎魔法ほのおまほうを撃ってきた。


それは避けることができない、絶妙なタイミングを狙った攻撃で、アリスティはまともに炎を食らって、炎上する。


「……ッ!」


アリスティには炎耐性ほのおたいせいがある。


さらに魔力による【防御結界ぼうぎょけっかい】も強力なため、炎魔法の威力を大きく減退げんたいさせる。


しかし、それでも将軍直属しょうぐんちょくぞくの魔導師の魔法はさすがに強烈であり。


アリスティに多少なりとも火傷やけどを負わせ、ダメージを与えた。


(なるほど……)


とアリスティは分析する。


ドラレスク将軍の実力もさることながら。


その配下にいる兵士たちも、精鋭中せいえいちゅう精鋭せいえいだ。


しかもドラレスク将軍との連携攻撃れんけいこうげきけている。


1対1ならばアリスティの相手にならずとも、多人数たにんずうで連携を取れば、それなりの勝負にはなるというわけだ。


その連携に対して、アリスティは思った。


(……甘い)


アリスティの脳裏に浮かぶのは、フレッドの連携だ。


かつてアリスティは、フレッドの軍事訓練に付き合い、フレッドとセラスが織りなす連携攻撃れんけいこうげきを受けたことがある。


強く、速く、からすらも考慮に入れたフレッドたちの連携は、まさしく鬼というべきものだった。


あれに比べれば。


この程度の人数、この程度の連携など……


大した問題にならない。


「ふう……」


アリスティが集中力を高める。


次の瞬間。


拳の突きが炸裂する。


何もないところを打つ、うつろな打撃。


しかし。


「ぐっ!?」


拳から風圧が巻き起こり、槍戦士やりせんしの腹に炸裂する。


その程度の風圧では、精鋭である槍戦士を殺すには至らないが……


彼が風圧で打たれ、ひるんだ一瞬の内に、アリスティは間合いへと詰め寄っていた。


「ちっ!」


槍戦士は舌打ちをしながら回避しようとする。


しかしアリスティの二撃目にげきめ


かんを駆使したアリスティが、槍戦士の避けた先へと手を伸ばし――――


槍戦士の首を掴んだ。


「うぐっ!!?」


アリスティの握力に、首がへし折れるほど強くつかまれた槍戦士が、苦悶の声を漏らす。


アリスティは、首をつかんだ手で、槍戦士の身体を持ち上げ――――


そのまま魔導師のほうへと投げつけた。


「がああああっ!!?」


剛速球ごうそっきゅうで投げられた槍戦士。


直後。


「あぐぁっ!?」


魔導師に激突する。


槍戦士と魔導師が、もつれあうようにもんどり打って、地面を転がった。



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