第9章339話:アリスティの戦い

「ふう……」


少しのあいだ、私は物思ものおもいにふける。


それから剣をアイテムバッグへと片付けた。


ブランジェ平原を眺める。


ざっくりと戦況を確認する。


(ローラ軍はいい感じに優勢だね)


ブランジェ軍とブロストン軍のぶつかりあい。


それはほとんど互角。


あるいはブランジェ軍が、やや有利である。


ブランジェ軍は3000名しかいないが……


ブロストン軍の士気はかなりのレベルで下がっていたし、指揮系統しきけいとうも大幅に乱れている。


ゆえに互角の戦いを演じられているのだ。


初動でキャンピングカーによって暴れまわった甲斐かいがあったね。


(……ただ、もう少しブロストン軍に痛打つうだを与えて、戦の趨勢すうせいを決定的なものにしたいところだね)


と私は分析した。


再度、アサルトライフルをアイテムバッグから取り出す。


「……殲滅せんめつを再開しましょうか」


そうしてアサルトライフルによる銃撃を再開した。







<アリスティ視点>


ブロストン軍を突破したアリスティ。


敵の本陣に到着する。


しかし。


ブロストン本陣に、侯爵の姿は居なかった。


ドラレスク将軍と、その配下はいか7人だけが、そこに立っている。


「来たか」


とドラレスク将軍が静かに口を開いた。


アリスティは尋ねる。


「ブロストン侯爵は逃げたんですか」


「逃げた……というよりは、退避しただけだ」


ドラレスク将軍が答えた。


アリスティは肩をすくめる。


「同じことでしょう……まあ、今回はドラレスク将軍の首だけいただければ、それで構いませんが」


アリスティはファイティングポーズを取る。


鬼気きき……とも形容されるような、圧倒的な気迫をにじませる。


【恐竜】というふたを持ち、豪傑ごうけつうたわれるドラレスク将軍でさえ、その気迫には恐れを禁じえない。


しかし。


ドラレスク将軍は己の恐怖を振り払い、得物えものである大剣を構えた。


「ランヴェル帝国最強の戦士、アリスティ・フレアローズ……一度、死合しあってみたいと思っていた」


「『元』帝国戦士ていこくせんしです。いまは帝国人ていこくじんではありませんから」


とアリスティは訂正した。


「ふ……そうだったな」


ドラレスク将軍が、微笑み……


そして。


「ゆくぞ!!」


る。


一歩で間合いを潰す、ドラレスク将軍の力強ちからづよい踏み込み。


アリスティへと迫りながら大剣をぎ払う。


「ッ……!」


ドラレスク将軍の斬撃を、アリスティはかわす。


続いてアリスティのカウンターの拳。


これをドラレスク将軍がバックステップで回避する。


追いかけようとしたアリスティ。


しかし、そのとき。


ドラレスク将軍の配下が、アリスティへと迫ってきた。


「テヤァッ!!」


「ハァッ!!」


左から迫る槍の突き。右から迫る斧の上段。


まずアリスティは槍を余裕をもって回避する。


続いて右からやってくる斧の刃を、なんと素手で受け止めた。


「!?」


驚愕する戦士たち。


アリスティがふたたび反撃の構えを取る。

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