第9章335話:vsサリザ

サリザが、笑う。


「くはははははは!! 手加減!? あたしに手加減だと!!?」


「……」


「気でも狂ったのか!? アリスティのいないテメエなんて、ただの雑魚! そんなテメエが、あたしに手加減なんて……どの口が言ってんだよ?」


「まあ、試してみればわかるんじゃないですか?」


と私は淡々と言った。


サリザが、くくくと笑いをこぼしながら告げる。


「なるほどな。追放されてから、ずいぶん増長ぞうちょうしたらしい……己の立場ってもんを、思い出させてやらねえとな?」


サリザが剣を握る。


そして。


駆け始めた。


一瞬にして間合いを詰めてくる。


下からななうえにすくいあげる斬撃。


私はソレをかわす。


「……!」


斬撃を避けられたサリザが目を見開く。


私は一連の動きを冷静に分析する。


(やっぱり、サリザのほうが私より強いね)


踏み込みの速さ。


間合いの詰め方。


斬撃の強さとやわらかさ。


どれも高いレベルでまとまっている。


サリザは傲慢ごうまんな性格だが、その自信を支える実力があるのだ。


錬金魔導師である私よりは、明らかに戦闘力が高い。


だが。


「ラァッ!!」


サリザが二撃目にげきめを放ってくる。


そこに、私が拳をあわせる。


「ふっ!」


呼気を一つつきながら、サリザの顔面に拳を放つ。


「!?」


サリザは目を見開きつつ、素早く顔をそらして、私の拳をかわした。


バックステップで距離を取るサリザ。


こちらを警戒とともに見つめてくる。


「あたしの剣にカウンターを合わせやがっただと……?」


私は言った。


「んー、避けられてしまいましたね。今の拳じゃダメですか」


さらに私は続けた。


「でも、ま、修正不可能しゅうせいふかのうってわけでもないですね。……次は当てます」


「あ?」


サリザが私をにらむ。


「調子こいてんじゃねーよ。エリーヌのくせによ!!」


怒気どきをにじませながら、ふたたび斬りかかってきた。


しかし。


今度は私も動き出す。


キャンピングカー屋上の床を蹴って、サリザに迫る。


「!!」


私は拳を放つ。


かわされる。


すかさず回し蹴りを放つ。


しかしこれもかわされる。


「ヅォラアッ!!」


剣を放ってくるサリザ。


それを私が回避しつつ、カウンターのパンチを放った。


「ぐっ!?」


サリザのあごにクリーンヒットする。


よし。


当たった。


成果を感じた私は、即座にバックステップで距離を取る。


「……」


サリザが驚愕に沈黙していた。


私は言った。


「なかなか良い感じで決まりましたね。角度やタイミングもバッチリです。あと、いまの攻防で気づいたんですけど――――」


一拍置いてから、私は告げた。


「サリザさん。あなたやっぱり、大したことないですね」


「……ッ!」


サリザがこめかみに青筋を浮かべた。


激怒の目を向けてくる。

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