第9章330話:最強の戦士3

アリスティも、別に雑兵ぞうひょうと戦うことは望んでいなかった。


彼女は思った。


(そろそろ、任務を果たしましょうか)


エリーヌから与えられた任務―――ドラレスク将軍の討伐。


アリスティが走る構えを取る。


そして、走行をはじめた。


全速力ぜんそくりょく一歩いっぽ手前てまえぐらいのハイスピード。


向かうは敵本陣てきほんじんの方角。


いきなり走り出したアリスティに、ブロストンへいたちは慌てて道を開けた。


どうせ戦っても勝てないとわかっていたブロストン兵たちは、アリスティに対して「さっさと行ってくれ」と言わんばかりである。


しかし、中には。


「い、いかせるかぁ!!」


と勇気を持って、アリスティの進路に立ちはだかる兵士もいた。


まだ若い兵士である。


彼には未来があった。


将来をちかった恋人もいた。


この勇敢ゆうかんなる兵士を前に、アリスティは――――


「……」


そのまま、無言で突っ込んだ。


まるでそこに敵兵てきへいなどいないかのごとく。


お構いなしに突っ込んでいく。


アリスティが立ち止まると思っていたその若い兵士は、困惑した。


「へ? ―――ぐがごばっ!!!?」


そして、アリスティの体当たいあたりを食らって吹っ飛んだ。


全速力ぜんそくりょくのキャンピングカーとぶつかるよりも、凶悪きょうあく激突げきとつである。


吹っ飛ばされた若兵士わかへいしは、もちろん一瞬で絶命ぜつめいした。






アリスティがさらに走行速度そうこうそくどを上げた。


「あ、あぁぁっ!!?」


兵士たちがアリスティの射線しゃせんに入ることをけて、道をあける。


腰を抜かして逃げ遅れた兵士は、アリスティに吹っ飛ばされるか、き殺されて死んだ。


アリスティは、誰が目の前に立っていようとお構いなしだ。


速度をゆるめず、足を止めず、そのまま突っ込んでいく。


当たり前だが、誰もその走行そうこうを止めることはできない。


たとえるなら、新幹線しんかんせんが全力で突っ込んでくるのを、生身なまみで止めようとするようなものだ。


当たればハネられるかき殺される。


だから、けた。


高速で吹き抜けていくあらしけるかのごとく、黙って道を開ける兵士たち。


それは兵士として、正しくない行動であろう。


しかし、どうせ命を張って立ちはだかったところで、アリスティの足を一秒すら止めることも不可能だ。


ならば無駄に自殺をするより、黙って通したほうが賢明だというのが、兵士たちの共通見解きょうつうけんかいである。


そんな兵士たちに対し、


(ラクに通れてありがたいです)


とアリスティは思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る