第9章328話:最強の戦士

<アリスティ視点>


アリスティはキャンピングカーの屋上から飛び降りる。


ゆっくりと歩き出す。


近くにいたブロストンへいたち身構みがまえる。




「お、おい! あの新型しんがた馬車ばしゃから降りたぞ!」


敵将てきしょうだ!」


「殺せーー!!」




剣や槍、それぞれの得物えものを持った兵士たちが、アリスティのゆく手をふさぎ始める。


だがアリスティは歩みを止めなかった。


敵が集まってこようが、戦列せんれつを成そうが、関係ない。


まるで王者のごとく、悠然ゆうぜんと歩き続ける。


そこに。


「うおおおおおおおおおおお!」


と兵士が剣を振るってきた。


坊主の剣士である。


「やああああああああああ!!」


また別の方向から、兵士が槍を振るってくる。


ポニーテールの女兵士である。


アリスティはそれを、回避しなかった。


そのまま直撃した。


しかし。


「え?」


「なっ……!?」


誰もが目を疑った。


なんと、兵士の剣も槍も、アリスティの肉体に弾き返されてしまったからだ。


槍にいたっては、へし折れている。


「や、刃が通らない……だと!?」


兵士たちが、その事実に驚愕する。


最強の戦士たるアリスティの肉体に、たかだか兵卒へいそつの武器が通用したりはしない。


突き刺すことも斬ることも不可能だ。


そして。


アリスティの反撃が炸裂する。


まず剣を持っていた坊主の兵士にラリアットを決めた。


「ぐびばぼっ!!?」


アリスティの殺人的さつじんてきなラリアットを食らった兵士は、もちろん即死した。


次に、ポニーテールの槍兵。


「あ、あぁ……ッ」


槍がへしおられ、仲間が瞬殺されたことにガタガタと震えていた。


そんな槍兵にアリスティは堂々と近づき、頭をわしづかみにした。


「あが……いやだ、離して……!!」


アリスティはその槍兵やりへいを、まるでボールのごとく、敵に向かって投げつける。


アリスティの投擲とうてきは大陸最強レベルの威力を持つため、投げられた槍兵は、剛速球ごうそっきゅうとなってブロストン兵に飛んでいく。


「うあああああああああっ!!?」


人間が剛速球で飛んでくるという異常事態。


投げられた槍兵が、ブロストンの戦列せんれつに激突し、それでも尚とまらず。


射線上しゃせんじょうに存在する何もかもをなぎ倒しながら、100メートル先まで飛んでいった。


その一投いっとうで大量の死が発生した。


大量の恐怖も生んだ。


「あ、ありえねえ……」


「なんだ今の……おかしいだろ」


そのとき、隊長格の兵士が気づいた。


「こ、こいつは……アリスティ・フレアローズだァァッ!」


大声で叫ぶ。


「あの……帝国最強の戦士、アリスティ!?」


「まじかよ」


「か、勝てるわけねえ……!」


と兵士たちが口々くちぐちに言い、恐れおののく。

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