第9章325話:ゴーレム爆弾

私は、この爆弾を【ゴーレム爆弾】と名付けることにする。


私は告げた。


「では……アリスティ、お願いします」


「了解です」


アリスティは返事をする。


ゴーレムが、あぐらをかいた姿勢で座り、木箱きばこを抱え込む。


そのゴーレムをアリスティが持ち上げた。


そして。


「ふンッ……!!!」


アリスティが敵軍てきぐんへと、ゴーレムをぶん投げる。


木箱を抱えた状態のゴーレムが、空へとぶん投げられる。


高度を上げて飛んでいくゴーレム。


やがて最高到達点さいこうとうたつてんまでのぼめると、ゴーレムは重力にしたがい、落ちていく。








<ブロストン兵の視点>


キャンピングカーから、何かが放り投げられた。


それは上空へと打ちあがり、やがて落下してくる。


くるくると空を舞いながら、ブロストン軍の真ん中へ、落下してくるのは……


「ゴ、ゴーレム!?」


兵士たちが気づく。


落下地点らっかちてんの付近にいた兵士たちが、あわてて退しりぞいた。


直後。


ズザァアアアアンッ!!


と派手な物音を立てながら、ゴーレムが落下する。


ブランジェ平原の地面を砕きながら、着地したゴーレム。


砂塵さじんけむりが舞い上がる。


「あ、危ねえな!」


「ゴーレムを投げてくるなんて……何を考えているのかしら?」


「戦わせるためだろ?」


「おい、お前ら気をつけろよ? ゴーレムだぞ。動き出すかもしれん!」


と兵士たちが口々くちぐちに言いあう。


しかしゴーレムは動く気配がなかった。


着地したまま、微動びどうだにしない。


「う、動かないな」


「着地の衝撃で壊れたんじゃないの?」


おそるおそる兵士たちがゴーレムに近づく。


すると、一人の兵士が何かに気づく。


「ん……このゴーレム、何か持ってるぞ?」


「箱……?」


「木箱ね」


そのとき。


ゴーレムがもぞもぞと動き出す。


兵士たちが警戒して、武器を向けた。


しかしゴーレムは、兵士たちにはかいさない。


ゴーレムが与えられた命令は、木箱に火をつけることだけだ。


「……」


ゴーレムが黙々もくもくとマッチに火をつける。


そして木箱に着火した。


木箱に火がつく。


「な、何をしてるんだ……?」


兵士たちはざわめく。


嫌な予感がした。


どうしてかはわからない。ただ、無性むしょうに冷や汗が流れる。


逃げなければいけない。


ここにいちゃいけない。


そんな、本能が全力で警告を発するような感覚が、兵士たちを包み込む。


そして。


木箱の火が大きくなり、燃え上がった直後。


ピカッとまぶしい光が、木箱から放たれ―――――


大地さえ揺るがすような、とてつもない大爆発だいばくはつを引き起こした。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る