第9章324話:木箱

<エリーヌ視点>


私は、あちこちにいる魔法兵まほうへいの部隊を執拗しつように銃撃した。


あらかた駆逐くちくできたら、ひと息つく。


「ふう……」


機関銃から離れる。


「そろそろ、初動の仕上しあげといきましょうか」


私は、まず1体のゴーレムからアサルトライフルを回収した。


回収したアサルトライフルはアイテムバッグの中へ。


代わりにアイテムバッグから、箱を取り出した。


両手で抱えられるサイズの、木箱きばこである。


アリスティが尋ねてきた。


「その木箱は?」


「この木箱の中には、大量の爆弾が入っています」


爆弾を詰め込んだ木箱。


しかも、ただの爆弾ではなく、魔力を込めて威力を高めた【魔法爆弾まほうばくだん】である。


そんな魔法爆弾を、数十個も詰め込んだのが……この木箱だ。


私は告げる。


「これを敵軍てきぐんのどなかに投げつけて爆発させます」


「……とんでもない破壊力になりそうですね」


「はい。それと、その爆発を合図にします」


「合図?」


「姉上への合図です」


木箱の大爆発を合図にして、ローラたちの軍が突撃を開始する手筈てはずになっている。


私はまとめる。


「敵を吹き飛ばすためだけの爆弾ではなく、味方への合図にもなっている……ということですね」


「なるほど。さすがお嬢様、素晴らしい作戦です」


アリスティが言った。


私は微笑む。


そして木箱を、ゴーレムに手渡した。


さらにゴーレムに、着火用ちゃっかようのマッチも渡しておく。


「ゴーレム。合図をしたら、木箱に火をつけてください」


「……」


ゴーレムはこくん、とうなずく。


私はアリスティを振り返って、言った。


「ではアリスティ。このゴーレムを、敵軍へとぶん投げてください」


「え……ゴーレムを、ですか?」


「はい」


「木箱をそのまま投げたほうがよろしいのでは?」


とアリスティが提案してくる。


もちろんそれも考えた。


たとえば、遠隔操作えんかくそうさで爆破できる爆弾を木箱に詰めて、敵に投げるとか……ね。


しかし。


「それだと、空中で木箱を攻撃されて、爆発させられる危険がありますからね。敵軍の中に落ちるまで、ゴーレムに守ってもらったほうが確実です」


「なるほど、確かにそのほうがいいかもしれませんね」


とアリスティが納得した。

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