第9章323話:魔法兵の視点

<魔法兵の視点>


魔法兵まほうへいたばねる魔法隊長まほうたいちょうが、驚愕きょうがくする。


魔法弾まほうだんが効かないだと!? バカな!?」


50名からなる魔法兵。


その魔法兵による、魔法弾の一斉射撃いっせいしゃげきが、キャンピングカーに着弾ちゃくだんする寸前―――霧散むさんしてしまった。


かき消されたのだ。


結界のようなものにはばまれて。


「連中には、魔法も効かないというのか!?」


魔法隊長が冷や汗を浮かべる。


と。


そのときだった。


キャンピングカーから、けたたましい轟音ごうおんが鳴った。


ズドドドドドドド。


ズダダダダダダダッ!


その直後、かぜく何かが、魔法隊長の頬をかすめた。


魔法隊長の背後にいた魔法兵に着弾した。


「ぐああああああああああああ!?」


魔法兵が絶叫する。


彼だけではない、他の者たちも悲鳴や断末魔だんまつまの声をあげる。


魔法隊長は叫ぶ。


「そ、総員そういん! 防御結界を張れ!」


「やっています! ですが――――あガアァッ!!?」


答えていた魔法兵が吹き飛ばされる。


――――隊長に命じられるまでもなく、魔法兵たちは防御結界を展開している。


ところが、アサルトライフルや機関銃の威力は、魔法兵の防御結界ごと粉砕する。


なにしろエリーヌの使う銃火器じゅうかきは、ただの銃ではなく。


魔法と魔力の術式じゅつしきほどこされた、【魔法銃まほうじゅう】であり……


弾も【魔弾まだん】だからである。


圧倒的な火力を持ち、したの魔法兵では防ぐことができないのだ。


「くっ……退避たいひ! いったん退避せよッ!!」


魔法隊長は叫びながら、自分自身も逃げ始めた。


背後から風切かぜきる音が飛んでくる。


足元に着弾した銃弾が、地面を大きくエグり散らす。


怖い。


死神が背中を追いかけてくるような……


身もすくむような恐怖に、呼吸が苦しくなる。


魔法隊長は逃げながら思う。


(くっ……本来なら、楽勝で終わる戦争のはずなのに……!)


3000vs15000の戦い。


苦戦などなく、一方的にブランジェ軍を踏みつぶして終わるはずだった。


なのに。


死が……


死がすぐそこまで迫っている。


「く、うおおおおおお!」


魔法隊長は逃げた。


敵の射程範囲しゃていはんいからのがれるまで。


走って。


走って。


走って。


そして。


「くふ……ッ!?」


ふいに、呼吸ができなくなった。


「あ……」


立ち止まり、自分の胸を見下ろす。


胸から腹にかけて、巨大な穴があいていた。


呼吸ができなくなったのは――――


銃撃で胸部きょうぶを吹き飛ばされ、肺を失ったからだと。


そう気づいたときには、魔法隊長の意識は急激に遠くなり……


「――――――」


その場に倒れて、息絶いきたえた。

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