第9章321話:指揮官

<エリーヌ視点>


私はいったん、機関銃を発砲する手を止めた。


「初動はいい感じですね」


と、感想を述べる。


――――キャンピングカーによる体当たり。


――――アサルトライフルと機関銃による掃射そうしゃ


その二つをまともに食らったブロストンへいは、混乱と恐怖のうずに叩き込まれている。


なんとか応戦おうせんしようとしてきた兵も、だいたい蹴散けちらした。


(でも、まだまだ混乱が足りないね)


私はそう結論づける。


なにしろ、ブランジェ軍は3000名しかいない。


それに対してブロストン軍は15000人もいる。


5倍も兵力差へいりょくさのある戦争だ。


多少、ブロストンぐん出鼻でばなをくじいたくらいで、主導権しゅうどうけんにぎれたりしない。


私は告げる。


「アリスティたちはそのまま、掃射を続けてください」


「了解です」


とアリスティが返事をする。


雑魚を銃撃するのはアリスティに任せて、私はアイテムバッグからアンチマテリアルライフルを取り出した。


弾を装填そうてんして、銃撃の準備をする。


アンチマテリアルライフルで狙うのは……隊長格たいちょうかくの兵士だ。


(大事なのは、雑兵ぞうひょうを蹴散らすことではなく、隊長などの指揮官を殺すこと―――)


私は頭の中で、軍人としての知識を確認する。


――――軍は、命令によって成り立っている。


将軍や隊長などの指揮官による命令があって、はじめて兵が動くことができる。


逆にいうと、指揮官が死ねば、命令をくだす者がいなくなるということで、したの兵士たちは動けなくなる。


これが【指揮系統しきけいとう破壊はかい】であり、戦争における重要な目標の一つである。


「……」


以上のことを念頭に置きつつ、私はキャンピングカーの屋上にせた。


ちの姿勢で、アンチマテリアルライフルを構える。


アンチマテリアルライフルの射程は1500メートル前後。


この間合いの範囲内はんいないに、敵将てきしょうはいくらでもいる。


とりあえずかたぱしからころしていくことにした。


私はアンチマテリアルライフルのがねをひく。


「……ッ!」


ズドォンッ!!


アンチマテリライフルが火をく。


マッハ2の速度で飛んでいく銃弾が、隊長格たいちょうかくの戦士の頭蓋ずがいを吹き飛ばした。


いきなり隊長が死んだことで、部下の兵士たちが混乱しているのが見て取れる。

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