第8章314話:戦場

ブランジェ平原に到着する。


この平原こそが、領軍戦争の主戦場しゅせんじょうである。






戦場には、既に兵士たちが居並いならんでいた。


ブランジェ軍は3000名。


ブロストン軍は15000名。


数の差は歴然れきぜん


視覚的にも、それは明らかで、ブロストン軍は平原の向こうを埋め尽くすような数である。


対して、ブランジェ軍は明らかに兵の数が少ない。







あちこちで楽隊がくたいが音楽を打ち鳴らす。


笛。


太鼓たいこ


銅鑼どら


……などなど。


戦場の音楽が、緊張感を高めていく。


私はローラに話しかけた。


「姉上。私とアリスティの準備は終わりました」


「そう。わかったわ」


「戦争が始まったら、伝えた作戦通さくせんどおりにお願いします」


「了解」


とローラが答える。


ローラは、しみじみと言った。


「あなたと戦場に立つのは、久しぶりね」


風がローラの髪をさらう。


「ずいぶん前ですね。私にとっては、恥ずかしい記憶です」


昔の私は、本当に無能だったからなぁ……。


どうやったら失敗せずに終われるか……そればかり考えながら、戦場に立っていたような気がする。


「今日は、姉上に良いところをお見せしてみせますね」


私はそう告げる。


ローラは微笑んだ。


そのときだった。


「……! 侯爵がおでましのようだわ」


ローラがブランジェ平原の向こうを見つめる。


ブロストン軍のほうから、二人の男性が歩いてきていた。


背後には護衛らしき人物を二人連れている。


私は目を細める。


「ブロストン侯爵と、ドラレスク将軍ですね」


ローラがうなずく。


戦場前せんじょうまえの挨拶ね。エリーヌ、いきましょう」


「はい」


私は、アリスティを連れてローラと歩き出す。









ブランジェ平原の中央。


ブロストン侯爵とドラレスク将軍がかまえる場所まで、私たちは歩いてから、立ち止まった。


「……!」


そのとき、私はブロストン侯爵のななめうしろにいる女性を見て、驚愕した。


ブロストン侯爵の護衛だと思っていたが……彼女は。


「ははははは! マジでエリーヌがいるじゃねえか!」


と、その女性は笑った。


彼女はサリザ。


肩にかかるぐらいの青髪で、ウェーブがかかっている。


瞳は赤色。


軍服に身を包んでいた。


かつてフレッドの傘下さんかとして軍に所属し、私をさんざんイジめてきた女だ。


まさか、ここで再会するなんて。






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