第8章313話:準備

さて。


領軍戦争の開戦まで、もう時間がない。


私は、ローラと最低限の情報交換をおこなったあと。


手短てみじかに作戦を伝えることにした。


それはキャンピングカーを活かした作戦である。


キャンピングカーという科学と、それを活用した奇天烈きてれつすぎる作戦内容に、ローラは困惑をあらわにしつつも。


私の作戦にしたがうことを約束してくれた。









そのあと。


馬車に乗って、戦場へと移動する。


途中。


私は馬車の中で、アリスティと、あることについて相談する。


ブロストン侯爵家が雇った六傑についてである。


「おそらく、六傑は第四席だと思われます」


とアリスティが述べた。


「第四席……根拠は?」


と私。


「領軍戦争のような小競こぜいに、第一席が出てくることは、有り得ませんから」


とアリスティは答えた。


……なるほど。


アリスティ以外で残っている六傑は、


第六席。


第四席。


第一席。


この三つだけ。


第六席はミフォルトさんだからありえない。


第一席も、領軍戦争に参加しない気質だとすると。


残っているのは第四席……というわけだ。


「ちなみに第四席の名はキスフィール。不可視のアサシン……戦場においては、伝説の殺し屋と呼ばれています」


とアリスティは説明する。


私は尋ねる。


「伝説、ね……そのキスフィール氏は、どのような能力を持っているのですか?」


「透明化……です」


「透明化」


「透明人間になれる能力ということですね」


ふむ。


かなり厄介そうだ。


見えないところからの不意打ちなんて、さすがに対応するのは難しい。


アリスティは言った。


「おそらくキスフィールは、私を狙ってくると思います。ですから、キスフィールについては、私に任せてもらえませんか?」


「うーん……まあ、アリスティ以外だと多分勝てないですし、任せるしかないんでしょうけど。大丈夫ですか?」


「はい。必ず、私が打ち破ってみせます」


とアリスティが意気込んだ。


ただし、キスフィールが本当にアリスティを狙って行動するかはわからない。


私のほうでも、キスフィールのことは警戒しておいたほうがいいだろう。


「アリスティには【探知の指輪】を渡しておきましょう。透明人間と戦うならば、探知は極めて有効だと思いますし」


と私は言った。


探知の指輪ならば、透明化している相手でも、位置を特定できるはずだからだ。


しかし。


「いえ……探知の指輪は、お嬢様が持っていてください」


「え? ですが――――」


「この戦いにおけるきもは、お嬢様ですから」


とアリスティは言った。


私はうなずいた。


「わかりました。……では、スパーク爆弾を渡しておきます」


「スパーク爆弾……というと、ボタンを押したら雷が放出される武器ですか?」


「はい。キスフィールの姿が見えなくても、スパークは全方位ぜんほういに炸裂しますから、電撃を食らわせることができるはずです」


「なるほど……確かに」


とアリスティは納得した。


私は【高スパーク爆弾】をいくつかアリスティに渡しておく。


さらに【電撃無効化ブレスレット】も渡しておく。


ついでに【音波無効のネックレス】も。


アリスティに渡すだけでなく、自分自身も身につけることにする。


これで戦場では、気兼ねなくスパーク爆弾と音響兵器を使うことができる。


忘れずに【音響指輪】を指につけておいた。


最後に【射撃補正の指輪】も装着する。


「よし……これで準備万端ですね」


と私は述べた。

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