第8章310話:挨拶と本題

私は確認する。


「母上のことを聞きました。姉上は、私の冤罪を晴らしてくれたそうですね?」


「……ええ」


とローラが肯定する。


私は告げる。


「ありがとうございました。私のぎぬを晴らしてくれて」


ソファーに座ったまま、私は頭を下げて、感謝のを示した。


私は頭を上げて、さらに続ける。


「私は、姉上のことを、味方ではないと思っていた時期がありましたが……間違っていました」


「それは……仕方ないわ。あなたが屋敷でひどい扱いを受けていたとき、私は、見て見ぬフリをしたから」


とローラはうつむく。


ローラは続けて、言った。


「私はフレッドが怖くて……彼が死ぬまで、あなたを助けられなかった。今まで、ごめんなさい」


「いえ。もしも兄上に逆らっていたら、姉上は殺されていたかもしれません。仕方のないことだと理解しています」


ブランジェ家で、フレッドに面と向かって刃向はむかえる者はいなかった。


もし敵対していたら、ローラも無事では済まなかっただろう。


私は言った。


「これからは、仲良くしてもらえると嬉しいです」


「ええ、もちろんよ」


「ただ、」


と私は前置きしてから、本題を切り出す。


「そのために、片付けなくてはいけない問題がありますね」


私は姿勢を正す。


再会を喜ぶのは終わりだ。


私は告げた。


「ブランジェ家が、ブロストン侯爵家から、領軍戦争りょうぐんせんそうを仕掛けられたと聞きました。その問題を片付けなくては、姉妹で仲良くお出かけすることもできません」


「そうね」


とローラは肯定する。


私は言った。


「相当、わるいようですね?」


ローラはうなずいて、答える。


「ええ。劣勢……なんてものではないわ。大して兵力を集められなかったし、装備やアイテムもロクなものがない。……自分の無能さを実感しているところよ」


「姉上のせいではないでしょう。今のブランジェ家に味方する者が少ないことは、私でも想像できます」


フレッドがいない。


ディリスがいない。


アリスティも国外にいた……となれば、ブランジェ家に味方したくなる勢力はいない。


ローラは有能だが、フレッドやアリスティの穴を埋められるほどの逸材ではない。


私は尋ねる。


「ちなみに、兵数差へいすうさはいかほどですか?」


「3000対15000」


うわ……。


それは、エグイな。


兵の数が5倍も違うなんて……


始まる前から負けている、と言えるレベルだ。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る