第8章309話:再会

ブランジェ家の屋敷――――エントランスに入る。


私の姿を見た執事が、驚愕きょうがくした。


「エ、エリーヌ様!? それにアリスティ様も!?」


私は告げた。


「姉上と面会をさせていただいても?」


「はっ! ただちに、確認して参ります!」


執事が一礼いちれいをしてからあしで去っていく。


私はしばし待機する。


ふいに屋敷を眺める。


「懐かしいですね」


とアリスティは言ってきた。


私はうなずいた。


「はい。あまり良い思い出のない実家ですが……帰ってきた、という気持ちになりますね、不思議なことに」


懐かしい想いが心のうちを占めていた。


脳裏のうりに、屋敷での思い出や、ブランジェ領で過ごした記憶が揺らめいた。


嫌な思い出もたくさんある。


しかし、楽しかったこともあった。


ブランジェ家で過ごした日々の、全てが地獄だったわけではない。


そうしてしばらく感慨かんがいにふけっていると、執事が、ローラを連れて戻ってきた。


「姉上……」


「エリーヌ……」


私とローラが向かい合う。


久しぶりの再会。


いろんな想いが、胸のうちを駆けめぐる。


しばし見つめ合ったあと、私は告げた。


「ただいま戻りました、姉上」


ローラは微笑む。


「ええ。お帰りなさい。……アリスティも」


「はい。ご無沙汰ぶさたしております、ローラお嬢様」


とアリスティが深々しんしんと礼をした。


ローラは言った。


「まずは中へどうぞ。お茶を用意させるわ」


「はい。ありがとうございます」


と私は答えつつ、ローラとともに屋敷の奥に進んだ。







リビングへ案内される。


テーブルを挟んで置かれたソファー。


私とローラが向かい合って座る。


私のソファーのななうしろに、アリスティが立って控える。


私は告げた。


「まずは……お久しぶりです、姉上」


「ええ。久しぶりね。その……元気だった?」


ローラは聞きにくそうな口調で、尋ねてくる。


追放された私に気をつかっているのだ。


私はローラの気遣きづかいに微笑みつつ、答えた。


「はい。国外追放を宣告されたときは、絶望のどん底にいた気分でしたが……屋敷を出たあとは、存外ぞんがい、元気にやっていましたよ」


と私は答える。


なにしろ前世の記憶を取り戻して、ウキウキだったからね。


「そう。それは……よかった」


とローラは、しみじみとつぶやく。

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