第8章306話:国を越えて、帝国へ

キャンピングカーに戻り……


たった今あったことを、ニナに話す。


そしてランヴェル帝国に戻らなければならないことを告げた。


「――――というわけで私たちは、これからランヴェル帝国へ向かいます。今回のことに、ニナは無関係なので連れて行くことはできません」


「なるほど……わかりました」


とニナは納得した。


「では、しばらくお別れということですね」


「はい。まあ戦争が終わったら、リズニス王国に戻ってくると思いますので、数ヶ月ほどの別れになりますね」


私はそう答えた。


―――――数日後。


私は、ベルーシィル領に到着する。


ここはダルネア公爵が治める領地である。


公爵領都でニナをキャンピングカーから下ろす。


「ダルネア公爵によろしく伝えておいてください」


「……会っていかないんですか?」


とニナは尋ねてきた。


私はうなずいた。


「事が済んで、落ち着いたら、改めて挨拶に向かわせていただきます」


「そうですか」


ニナは納得する。


私は告げた。


「それでは、ニナ。また」


「……」


ニナはうつむいたままだ。


ややあって、ニナは言った。


「あの……エリーヌ様」


「はい」


「死なないで、ください……どうか、ご無事でいてください」


ニナが心配そうな顔を向けてくる。


私は微笑んだ。


「大丈夫ですよ。誰が相手でも、私は負けませんから」


戦争となると、命の危機はある。


しかし今の私は、負ける気がしなかった。


だから大丈夫だと、力強く告げる。


ニナが微笑む。


「はい……エリーヌ様。お気をつけて」


「ええ」


私はキャンピングカーに戻る。


ゴーレムに命じて、発進させた。


こうしていったんニナと別れるのだった。








リシアが語った情報が、本当かどうかはわからない。


ローラがディリスを告発したことも、


領軍戦争が勃発するということも、


全てウソかもしれない。


しかし、現時点では真偽しんぎの確かめようがない。


だから、全て本当だと仮定したうえで、準備を整えておくべきだろう。


「……」


領軍戦争があると仮定して、武器を作っておく。


弾薬を作る。


爆弾を作る。


銃もスペアをいくつか用意しておく。


あとは高ランクのポーション類。


錬金魔法でアイテム錬成をしまくる。


―――――キャンピングカーが街道を走る。


やがてリズニス王国を出国した。


カラミア公国にたどりつく。


公国の街道を走行する。


そのとき、ふと思う。


(私は国外追放されたのに、ランヴェル帝国に立ち入っていいのかな?)


しかしすぐに、気づいた。


リシアは、私の冤罪が証明され、ディリスが処刑されたと言っていた。


だとすると、私の国外追放処分は撤回されているだろう。


だからたぶん、ランヴェル帝国に入国しても大丈夫だ。


「……」


ランヴェル帝国へと向かう、私の心境は複雑だった。


帝国を追放されて1年。


まさか、姉を助けるために、帰国することになるとは。


人生、何があるかわからないものだ。







そして。


2日後。


私は、ランヴェル帝国へと入国し……


ブランジェ領へと到着するのだった。





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