第8章304話:帝国の様子

肩にかかるぐらいの赤い髪。


向かって左側の目は前髪まえがみに隠れており、見えない。


右側の瞳の色は緑色だ。


耳には水色のイヤリングをつけている。


紅色の戦衣に身を包んでいた。


私は尋ねた。


「……何の御用ごようですか?」


「もちろん、フレッド様の復讐ふくしゅうに参りました」


そうリシアが答える。


「……」


私は目を細める。


リシアを警戒しながら見つめる。


リシアが告げる。


「……もっとも、そちらにアリスティ様がいる状態で、私に勝ち目はありません」


「そうでしょうね」


と私は肯定する。


リシアは強い。


フレッドが認めるほどだから、当然だ。


しかしアリスティほどではない。


それはリシアも自覚している。


「ですから、私はあなたを誘い出すことにしました」


とリシアが告げる。


私は首をかしげる。


「誘い出す? どこへ?」


「戦場へ」


リシアがそう答える。


さらに彼女は続けた。


近々ちかぢか、ブランジェ家が戦争をします」


「!?」


「ブランジェ家は、ブロストン侯爵家から、領軍戦争を仕掛けられたのです」


私は驚愕して、尋ねる。


「りょ、領軍戦争って……多数の貴族の賛成がなければ、できないはずでしょう!?」


「はい。その多数の賛成があったからこその、領軍戦争です」


「そんな……」


「ブランジェ家をひきいるのはローラ様です。現在、ローラ様は貴族社会で孤立しており、領軍戦争では敗北濃厚という見通しです」


「姉上が……」


そこで私は、ふと疑問に思った。


私は尋ねる。


「いや……ちょっと待ってください。どうして姉上なのですか? ブランジェ家を率いているのは、母上では?」


「ご存知なかったのですか。あなたの母――――ディリス様は、とっくに処刑されておりますよ」


「なっ……」


リシアが説明するには――――


私の姉であるローラが、私の冤罪を証明するために、母ディリスを告発したらしい。


その結果、冤罪が認められ……


私をおとしいれたディリスは死罪になったという。


(姉上が……私のぎぬらしてくれた……?)


衝撃だった。


姉上は、母やフレッドのように私をイジメたりはしなかったけれど……


手を差し伸べてくれたりもしなかった。


あくまで中立というか、我関われかんせずの立場。


フレッドににらまれるのが怖かったからだろう。


「ローラ様は、あなたのことを愛しておられます、エリーヌお嬢様」


「……」


「そんなローラ様を、見捨てることができますか?」


その言葉に、私は深く悩まされる。





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