第8章302話:課題

数日後。


朝。


晴れ。


雪が降っておらず、穏やかな日和ひより


冒険者ギルドにやってきた。


私は受付嬢に話しかける。


「【第3層試験】の課題を聞きに参りました」


受付嬢が応対してくれる。


「エリーヌ・ブランジェ様ですね? 承っております――――【第3層試験】の課題は、こちらでございます」


受付嬢が、羊皮紙を一枚差し出してきた。


私は、その紙を手に取る。


紙には以下のように書かれている。




・魔鉄鉱x3

・魔水晶x3

・百年樹のアクアヴィアータx1

・ニケルホーンx1




ふむふむ。


素材の名前だね。


私は尋ねる。


「ええと、つまり、ここに書かれた素材を集めて来い……ということですか?」


「はい。それが課題でございますね」


と受付嬢は肯定する。


なるほど。


つまりこれは、入場許可証を得るための素材収集クエスト。


ただ……


(上3つは既に持ってる)


魔鉄鉱3個、


魔水晶3個、


百年樹ひゃくねんじゅのアクアヴィアータ1個


……については、既に所持していた。


残りはニケルホーンだけだ。


ただニケルホーンという素材は聞いたこともない。


私は受付嬢に尋ねた。


「あの、ニケルホーンとは何ですか?」


「……申し訳ありませんが、素材の詳細についてはお答えできません」


「何処で手に入るのかも?」


「はい」


入手場所が不明なものを、自力で集めてくること……


それも課題に含まれるということか。


「わかりました。最後に質問ですが……期限はいつまでですか?」


「期限はございません」


素材の提出にどれだけ時間がかかってもいい、と。


把握した。


私はきびすを返し、冒険者ギルドをあとにする。






キャンピングカーへ戻る。


ニナとアリスティに詳細を伝えた。


すると。


「ニケルホーンですか。私、聞いたことがありますよ」


とニナが言った。


私は尋ねる。


「本当ですか。どこで手に入るんです?」


「えっと……たしか、ダルネア様がお持ちであったはずです」


ダルネア公爵……


なんだか、ずいぶんと懐かしい名前を聞いた気がするな。


リズニス王国ではお世話になった。


あれ?


それって、つまり。


「ニケルホーンを手に入れるためには、リズニス王国まで戻らないといけないってこと……?」


と私はつぶやく。


アリスティが口を開く。


「まあ、そういうことになるんじゃないでしょうか。ちなみに私は、ニケルホーンの入手場所を存じ上げません」


ニナが言う。


「私も、ダルネア様以外で、ニケルホーンの入手場所には心当たりがありませんね」


「ふむ……」


じゃあ、やっぱりダルネア公爵のもとへ行かなくちゃダメってことか。


「わかりました。では、リズニス王国へ戻ることにしましょう」


「はい」


「承知しました」


とニナ、アリスティが答える。


(思わぬ形でリズニス王国に帰ることになったな……)


と私は内心、苦笑するのだった。






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