第8章299話:テレパシー

これなら、何もしなくても、指輪の効果だけで敵を制圧することが可能だ。


(たしか、自分より格下の相手しか威圧できない指輪だけど……)


アリスティには、そんな制約は有って無いようなもの。


無敵のアクセサリーである。


「テ、テメエら……いったい、何をした……ッ!?」


恐怖に怯えた声で、バルゴが聞いてくる。


私は答えた。


「威圧の指輪ですよ」


「い、威圧の指輪?」


「ええ。格下の相手を威圧できる指輪です。あなたたちは全員、アリスティより弱いので、威圧されたのです」


「くっ……馬鹿な……オレたちが、お前らより、弱い、だと?」


認めたくないというバルゴの表情。


いや、まあ、アリスティより強い戦士なんてほとんどいないからね。


「さて、そろそろ殺しましょうか」


「……ッ!? ま、待ってくれ! オレたちが、悪かった、ゆ、許してくれ……ッ!」


とバルゴが懇願してきた。


もちろん無視する。


ところで、私は、この賊たちを利用して、一つ試したいことがあった。


それは、ゴーレムの遠隔指示えんかくしじである。


――――本来、錬金ゴーレムには口頭こうとうで指示を出さなければならない。


そうしなければ錬金ゴーレムは動いてくれないのだ。


しかし錬金魔法を進化させると、錬金ゴーレムに対して、念じるだけで命令を聞かせられるようになる。


つまりテレパシーが通ずるようになるのだ。


これを試したかったので、私は錬金ゴーレムを1体、生成する。


そして。


(賊たちを殺せ)


と頭の中で命じる。


すると。


ゴーレムが動き出した。


どし、どし、と雪を踏みしめ……


賊たちに殴りかかる。


「うア、うああああああああああああああ!!」


賊たちは悲鳴を上げた。


そのうちの一人の頭蓋を、錬金ゴーレムが粉砕して、殺害する。


(ストップ)


と私は制止命令を出す。


錬金ゴーレムが立ち止まる。


私はアイテムバッグからアサルトライフルを取り出した。


そのアサルトライフルを、雪の地面に置く。


(このアサルトライフルを拾って、賊たちを撃ち殺してください)


頭の中でテレパシーを送る。


錬金ゴーレムが承知して、アサルトライフルを拾った。


賊に向かって発砲しはじめる。


「あ、あああっ!!」


「嫌ああああああ!!!」


「ごふっ……!!?」


3人が死ぬ。


うち1人はバルゴだった。


ちょうどそこでアサルトライフルが弾切れになったようだ。


(とりあえずテレパシーは成功だね)


と私は結論づけた。


「ゆ、許して……」


と最後の一人、女性の賊が懇願こんがんしてきた。


「娘がいるの……お願い……」


私はもう一挺いっちょうのアサルトライフルを取り出した。


そして命乞いのちごいをしてくる賊を、銃撃してち殺した。

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