第8章297話:新型テント

私は、目を細めた。


「ギャハハハ、俺たちに狙われてるとも知らず、のんきに木偶でくづくりに励んでいるとは……馬鹿な女どもだぜ」


とバルゴの隣にいた、キザな顔つきの男が笑った。


私は尋ねる。


「何のご用ですか?」


「あ? 決まってんだろ?」


とバルゴがあくどい笑みを浮かべる。


「先日、テメエに冒険者ギルドで大恥おおはじかかされたからよ。その慰謝料を請求しにきたんだよ」


大恥……


合気道で制圧したことを言っているのか。


私は言った。


「絡んできたのはあなたですし、正当防衛でしょう?」


「うるせえ! オレ様に恥をかかせた時点で、テメエは大罪人なんだよ!!」


とわめきちらすバルゴ。


が、すぐにニヤついた笑みに戻ったバルゴが、言ってくる。


「そういうわけで、がね全部と、アイテムバッグ、それから……テメエらの後ろにある新型テントをいただこうか」


ん?


……新型テント?


なんのことかと首をかしげる。


しばし思考して、私は思い当たった。


(もしかしてキャンピングカーのことかな?)


キャンピングカーはよく『新型馬車』と形容されることがある。


しかし、バルゴたちはキャンピングカーが走っている姿を目撃していない。


だから馬車ではなく、野外での宿泊施設――――テントであると思ったのだ。


『新型テント』か。


新しい呼称だね。


「あなたがたに、慰謝料を支払う道理がありませんね」


と私は告げた。


バルゴが目を細める。


「ほう? 抵抗するのか? 大人しく要求に応えりゃ、半殺し程度で済ませてやっても構わねえが?」


「もちろん抵抗します。あなたがたに敗れるほど、私たちは弱くありませんので」


「……ッ」


バルゴが顔をしかめる。


他の四人も、憤怒ふんどの表情に浮かべた。


そのときアリスティが聞いてくる。


「お嬢様……彼らはなんと?」


「……ご想像の通りですよ。私たちを襲おうとしています」


「つまり制圧していい、ということですね?」


「はい」


アリスティが一歩前に出る。






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