第8章296話:街と雪だるま

街外れ。


街を見渡せる、ゆきおか根元ねもとあたりにキャンピングカーを設置する。


試験は5日後ということなので、しばらくキャンピングカーの中で過ごすことにしよう。


その夜。


私たちは、イッカクの魔物を使ってステーキを作ることにした。


そこでわかったことは……


イッカクの魔物は、牛肉と味がそっくりだということだ。


しかも通常の牛肉ではなく、上級ランクの霜降しもふにく


めちゃくちゃ柔らかくて、美味しい。


食べると、舌のうえで肉が溶けるような柔らかさである。


私たちは、このステーキ肉に舌鼓したづつみを打ち……堪能した。






翌日。


私は、カルッザの街で買い物をすることにした。


雪国ゆきぐにでしか手に入らないアイテムや素材を手に入れておこうと思ったのだ。


ただ、市場いちばは開かれていなかった。


雪と風が強い日だったからである。


ゆえに私は、アイテム屋や素材屋、雑貨屋などを巡って、欲しいものを買い集めることにする。


結果、


錬金素材、


魔物の素材、


鉱物、


薬草類、


錬金書物、


……などなどを購入することができた。


ホクホク顔で、私はキャンピングカーへと帰還するのだった。






さらに翌日。


キャンピングカーの車内で、のんびりと過ごす。


昼食後。


雪が晴れていたので、私たちは外に出ることにした。


空は水色に澄んでおり、薄い雲がたなびいている。


私は、キャンピングカーの近くで、雪だるまの製作をおこなうことにした。


私と、アリスティと、ニナを模した3体の雪だるまである。


ニナが目を輝かせる。


「わぁ……素敵ですね」


「面白い発想ですね。すごく可愛らしいと思います」


アリスティが微笑んで、そう告げる。


アリスティとニナは、雪だるまの存在を知らない。


だから雪だるまという発想に、とても感心しているようだった。


「冬になったら、ぜひ作りたいと思っていたんですよね」


前世で雪だるまを作ったのは、だいぶ昔である。


なので異世界で冬になったら、もう一度製作してみたいと思ったのだ。


とりあえず3体、にこやかに微笑む雪だるまを製作できて、満足だ。


だが。


そのときだった。


「おいおい、なんだその木偶でくぼうは?」


ふいに声がした。


雪を踏みしめる足音が4、5つほど聞こえてくる。


声がしたほうを振り向くと……


ぞくらしき格好をした5人の男女がいた。


男が3人。


女が2人。


うち1人は見覚えがある。


先日、冒険者ギルドで会った男だ。


(……バルゴ?)


バトルアックスを背負った熊のような体格の男。


バルゴである。

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