第8章295話:受験の手続き

話は理解した。


私は尋ねる。


「えっと……つまり第3層以上には立ち入り禁止ってことですよね? 私たち、入っちゃダメってことですか?」


「……残念ですが、そういうことになります」


「ちなみに私は冒険者ではありません。だとすれば、冒険者ギルドの意向を無視して、勝手に入場することもできたりは」


「入場制限は冒険者ギルドだけではなく、国の法律で決まっていることですので……」


法律で決まっていること……


つまり、国内の全員に適用される入場制限だということだ。


冒険者ギルドだけで決まっているルールなら、冒険者じゃない私は無視できたんだけどな。


うーむ。


困った。


氷竜と戦うには第3層以上を探索しなければならない。


なんとしても入場許可が欲しいところだ。


私は尋ねる。


「入場許可は、どうやったら貰えるんです?」


「冒険者ランクがAAランク以上であれば、入場可能です」


つまり冒険者登録をしてから、AAランクまで昇格しろと。


無理じゃないかもしれないけど、面倒だな。


さらに私は尋ねる。


「……他の方法はありませんか?」


「そうですね。冒険者ではない方に向けて、入場許可証を発行する制度を設けています」


「どんな制度ですか?」


「カルッザ大雪山への入山希望者に、課題を提示します」


「課題」


「はい。その課題をクリアした場合に、入場許可証を授与させていただきます。この制度を【第3層試験】と呼んでいます」


なるほどなるほど。


課題、ね。


どんな内容かはわからないけど、いまから冒険者登録をしてAAランクを目指すよりは、早いだろう。


よし。決めた。


「では、さっそくその【第3層試験】を受けさせていただきたいです。受験の申請はどこでおこなえますか?」


「こちらから可能ですよ。……ええと、入山希望者は3名でしょうか?」


もちろん私と、アリスティと、ニナの3名だ。


私はうなずく。


「はい」


すると受付嬢が補足してきた。


「3人パーティーでしたら、最低でも2名の入場資格が必要です」


「ええと、つまり3人のうち2人が、AAランクか、入山許可証が必要……ということですか」


「はい」


だとすれば私とアリスティの2人で受けるしかない。


とりあえずアリスティに、以上のことを翻訳して伝える。


するとアリスティは言った。


「私は冒険者カードを持っていますよ」


「え、そうなんですか?」


「はい。昔、冒険者をやっていたことがありまして。ちょうどAAランクでした」


そうだったのか。


初耳である。


うーん。


だとしたら、アリスティは現時点でも入山可能。


あとは私が入山許可証を得られればいいってことになるな。


(じゃあ、受験するのは私だけでいいね)


と私は把握する。


受付嬢に再度、話しかけた。


受験手続じゅけんてつづきをお願いします。受けるのは私ひとりだけです」


「かしこまりました。こちらの書類に必要事項をご記入いただいたのち、ご提出ください。なお読み書きができない場合、代筆も可能でございます」


「大丈夫です。自分で書けます」


私は書類をざっと眺める。


受験者の名前や、受験理由などの記載が求められている。


私は、書類に必要事項を記入した。


記入が終わったら提出する。


受付嬢は言った。


「確かに受け取りました。課題については5日後、昼12:00にお伝えしますので、冒険者ギルドまでお越しください」


「わかりました」


かくして、受験申請を完了する。


用が済んだので、冒険者ギルドをあとにした。




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