第8章294話:入場制限

冒険者ギルドを出て行くバルゴ。


その背中を見送った私は、呆れたように息をついた。


アリスティとニナは、言語がわからないので、私とバルゴが何を言い争っていたのか不明だろう。


私は短く端的に、説明した。


「目をつけられてしまったかもしれません」


するとアリスティがなんとなく理解したのか、言ってきた。


「あの程度の戦士なら、不意打ちで奇襲してきても、大した脅威にはならないでしょう」


「まあ、そうですね」


と同意する。


私は振り返って、受付嬢に告げた。


「お騒がせしました。いきなりごとを起こしてしまい、申し訳ありません」


「いえ……バルゴさんはが多いですから、よくあることですよ」


受付嬢が苦笑した。


私は仕切りなおして、尋ねた。


「あの……それで氷竜についてですが」


「ああ、はい。氷竜について何をお聞きになりたいのでしょうか?」


そう尋ねてきたので、私はいろいろと質問してみることにした。


結果――――


カルッザ大雪山には、やはり氷竜が存在することがわかった。


ただしいつでも出現するわけではなく、地上に姿をあらわすのは真冬まふゆのみ。


それ以外の季節は地下に身をひそめているのだという。


また、討伐の難易度についてだが。


これまでにAランク以上の冒険者が、幾度となく氷竜退治ひょうりゅうたいじに挑んできたが、ほとんどの者は山に入ったきり、行方不明になってしまったという。


受付嬢が告げる。


「――――このため、冒険者ギルドでは氷竜の討伐難易度とうばつなんいどをSランクと認定しています」


「Sランク……」


「はい。加えて、カルッザ大雪山だいせつざんだい層以上そういじょうには入場制限にゅうじょうせいげんを設けています」


ん……?


第3層?


入場制限?


ひとつひとつ尋ねることにする。


「第3層とは?」


「カルッザ大雪山はとても広大な山脈です。そして奥に行けばいくほど険しく、魔物の強さも増していきます。よって冒険者ギルドは、カルッザ大雪山を難易度に応じて5つのエリアに分けています」


フィールドやダンジョンにはよくあることだ。


フィールドの浅いエリアには弱い敵が。


フィールドの深いエリアには強い敵が。


……といった具合に。


「一番浅いエリアを第1層。一番深いエリアを第5層としています。ちなみに第4層より奥は、調査が困難なため、よくわかっていないことも多いです」


「なるほど」


「氷竜が現れるのは第3層以降です。よって、うっかり入山者にゅうざんしゃが氷竜と遭遇してしまわないように、第3層以上には入場制限を設けているのです」


ふむふむ。


つまり私たちが氷竜と戦いたければ、まず第3層以上への入場許可を得なければいけないということか。

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