第8章293話:雪国の戦士
私は尋ねる。
「……あなたは?」
「俺はバルゴ。この冒険者ギルドじゃあ、名の知れた戦士だ」
「ふーん?」
名の知れた戦士、ね。
たたずまいからして、Cランクぐらいの実力はあるな。
弱くはない。
「お前らみたいなヒョロヒョロのパーティーで、氷竜なんざ狩れるわけねえだろ」
とバルゴは言ってきた。
私は首をかしげる。
「ヒョロヒョロって……重要なのは体格より、魔力でしょう?」
「ほう? 氷竜を狩れるほどの魔力があると?」
「さあ、それはわかりませんが……少なくとも私たち、あなたよりは遥かに強いですよ?」
と私は言い返す。
するとバルゴはいきりたった。
「あァ!? テメエらが俺よりも強いだと!? 口には気をつけろよゴラァ!!?」
と怒鳴り散らしながら、バルゴが私の胸倉をつかんできた。
私は目を細めて告げた。
「離してください」
「あ?」
胸倉をつかんでくるバルゴの手に、私は
「ッ!?」
さらにバルゴの
すると掴まれた胸倉を外すことに成功し、同時に、バルゴの肘と肩の関節を詰まらせる。
「いでででででで!?」
バルゴが悲鳴を上げる。
膝をついて、四つんばいの姿勢で苦しむバルゴ。
「な、なんだこれ!? 動けねえ!!?」
痛みに
今回、キめたのは
しかも
ここまで完璧に決まってしまえば、力づくで振りほどくのは難しい。
無理に動かすと
「だから言ったじゃないですか。私たちは、あなたよりも強いと」
「くっ……!!」
バルゴが歯ぎしりをする。
私はバルゴを軽く突き飛ばした。
「ぐッ」
バルゴが盛大に床を転がり、受身を取った。
「はぁ……はぁ……はぁ……テメエ……」
痛みで疲れたのだろう、バルゴは荒い息をしている。
その状態で敵意をむきだしにしてくる。
私は肩をすくめてから尋ねる。
「まだやりますか?」
するとバルゴは、舌打ちをした。
「ちっ……」
立ち上がったバルゴが、きびすを返して冒険者ギルドを立ち去ろうとする。
去り際、振り返って。
「テメエ……覚えてろよ」
と
バルゴが消えていく。
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