第8章292話:雪国の冒険者ギルド

干潟ひがたを抜ける。


辿り着いたのは、カルッザ大雪山だいせつざんの手前にある街だ。


――――カルッザの街。


雪に包まれた街である。


石造いしづくりの四角しかくい建物が建ち並ぶ。


道にしろ、建物にしろ、ほとんど雪が降り積もっていて、真っ白だった。


この街で、私たちは氷竜ひょうりゅうについて聞き込みをしたいと思った。


私たちは、氷竜がカルッザ大雪山にいる……ということ以外、何も知らない。


だからまずは情報収集をしたいと思ったのだ。


魔物の情報収集となると、冒険者ギルドが一番である。


したがって私は、街の冒険者ギルドを訪ねることにした。








――――カルッザの冒険者ギルド。


カルッザの街は石造りの家がほとんどであったが、この冒険者ギルドは木造もくぞうだ。


丸太まるたでつくられたログハウス建築。


暖炉だんろが焚かれていて、ロビーは暖かかった。


ロビーには冒険者がまばらにたむろしている。


ほとんどの者は、防寒性ぼうかんせいの高い、毛皮の衣服を着込んでいる。


(雪国らしい冒険者ギルドだね)


と私は思いつつ、受付嬢うけつけじょうに近づいた。


「冒険者ギルドへようこそ」


シュトラール雪国は、ルフシャ砂漠国と同じユルファント語である。


なので私は脳内の回路をユルファント語に切り替えて話す。


「聞きたいことがあって来ました」


「はい、なんでしょうか?」


「知人から、カルッザ大雪山に氷竜がいると聞いたのですが」


氷竜ひょうりゅうという単語に、近くにいた冒険者が何人か、こちらを向いた。


受付嬢も眉をぴくりと反応させている。


私は続けた。


「私は氷竜を狩りたいと思っています。なので、氷竜について知っていることがあれば、教えていただけませんか」


そのときだった。


「だははははは! 氷竜を狩るだと!? こりゃとんだおろもんが来たもんだ!」


一人の冒険者が横槍よこやりを入れてきた。


熊みたいな体格のオッサンである。


背中に大きなバトルアックスを提げている。

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