第7章285話:秋の食事

「いただきます」


と私はつぶやいてから、さっそく昼食を食べ始める。


まずは炊き込みご飯。


他の2人にはフォークとスプーンを渡してあるが、私だけは箸を使う。


箸で、ご飯とマガヒチダケをすくう。


匂いをかいでみる。


(う~ん、良いにおいですね)


香りは完全にマツタケだ。


お味は……


もぐもぐ。


うん!


美味しい!


マツタケの味を凝縮した風味。


口腔から鼻腔をくすぐるマツタケの香り。


マガヒチダケの深くて渋い味わいが、炊き込みご飯とよく合っている。


ダファルダムの鑑定では、マガヒチダケはマツタケの上位互換のように解析されていたけど……


確かにその通りだと納得する。


次にお味噌汁。


ずずっ……


はぁ……


美味しい。


お味噌の味わいと匂いが、身体中に染み渡っていくかのようだ。


天ぷらも食べる。


天つゆに浸した天ぷらを、口に運ぶ。


さくり。


サクサクの衣が口の中で崩れ、やわらかい白身魚の身。


ああ……


美味しい。


美味しいに決まっている。


私は極楽な気分になる。


そのとき、ニナが。


「この料理、初めて食べましたけど……ほんとに美味しいですね」


と炊き込みご飯を食べながら感想を述べた。


アリスティもうなずいてから、言う。


「前に食べた握り飯に近い料理ですね。しかし……景色にとても合っています」


そうだね。


私も秋に和食はピッタリだと思う。


ふと、食べながら周囲を眺める。


紅葉が黄葉が生い茂る森。


紅葉が黄葉がひらひらと舞い落ちて、散乱する地面。


水色の空にはうろこ雲がたなびき、やわらかな秋風が涼しげに吹きつけてくる。


自然に囲まれたアウトドアの昼食。


これぞキャンピングカー旅の醍醐味だね。








昼食が終わる。


しばらく休憩することにした。


各自かくじ、好きな時間を過ごす。


アリスティはウッドテーブルに座って、本を読む。


ニナはキャンピングカーに戻って錬金魔法のお勉強。


私はといえば……


地面にちらばった落ち葉のうえに、大の字で寝転がって、思いきり和んでいた。


うろこ雲の広がる空を見上げ……


全力でまったりする。


さらに深呼吸。


すー。


はー。


自分の体内にある空気を吐き出して。


清新な秋の空気を取り込むように。


すー。


はー。


意識的に深い呼吸を繰り返す。


次第に心拍数が下がってくるのを感じる。


リラックスした気分に包まれる。


時の流れがゆったりしていくような感覚。


自然に包まれ、一体化していくような感覚。


はぁ……


落ち着くなぁ……。


そうして。


存分にまったりしたあと。


私たちは、出発することにする。



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