第6章276話:秘薬

私はふたたび紙にかかれた製法レシピを眺める。


うん、これならすぐに作れそうだね。


「構いませんよ」


と、私は答えた。


ミフォルトさんがバッと顔をあげる。


「本当か!?」


「はい。すぐに取り掛かりますので、聖泉水以外の素材もいただけますか?」


「……! もう錬成を始めてくれるのか? わかった。すぐに素材を出そう!」


と、ミフォルトさんはアイテムバッグから素材を取り出す。


テーブルの上に差し出してきた。


私は、必要素材が揃っているかを確認する。


うん。大丈夫そうだ。


「えい、ほっ、えい……」


2秒後。


【生命の秘薬】が完成した。


私は言った。


「はい。どうぞ」


「……え?」


ポーション瓶に入った【生命の秘薬】を、ミフォルトさんに差し出す。


ミフォルトさんはぽかんとしていた。


「は……? ええ? なんだ今の? 何が起こったんだ?」


「ですから、錬成をおこなったんですよ」


「いや、まだ2秒ぐらいしか経ってないじゃないか?」


「はい。2秒で終わらせました」


私が答えると、ミフォルトさんはふたたびぽかんとする。


アリスティが横から告げてきた。


「お嬢様は、規格外の錬金魔導師ですから、この程度は当たり前です」


「あ、当たり前……」


ミフォルトさんは混乱している。


ニナも告げた。


「エリーヌ様の錬成を見たら、驚きますよね。私も始めてみたときは、びっくりしましたから」


数瞬後、ミフォルトさんが疑義を呈してくる。


「せ、生命の秘薬は、Sランク級のアイテムだぞ? 君の実力を疑うわけではないのだが、その……そんなすぐに作れるとは思えない。これは、本当に完成品なのか?」


ふむ。


まあ、信じられないか。


私は、テーブルを立ち上がる。


アイテムバッグからダファルダムを取り出した。


生命の秘薬を、まずは自分で鑑定してみる。




◆◆◆

【生命の秘薬】

致死率80%程度の重傷、難病を完治させる薬。


◆◆◆



ほうほう。


こういう効果なんだね。


私は、ダファルダムをミフォルトさんに渡した。


ミフォルトさんは立ち上がって、ダファルダムを受け取る。


彼は一度ダファルダムを使ったことがあるので、同じ要領で、秘薬の鑑定をおこなう。


すると。


「本物なのか……」


ミフォルトさんが、信じられないものを見たかのように目を見開く。


私は言った。


「これで依頼達成ですね。さあ、受け取ってください」


ミフォルトさんは【生命の秘薬】を手に取る。


手のひらに乗った薬を見つめながら、ミフォルトさんは、涙を流した。


「すごい……すごいな、君は。……まるで、奇跡を見ているようだ」


そして、くしゃくしゃになった笑顔で言ってくる。


「ありがとう……っ、これで、妹を救うことができるよ。本当にありがとう……!」


と、ミフォルトさんは何度もお礼を言ってきた。

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