第6章272話:危険

ヒニカさんは言う。


「しかし、さきほども言ったように、魔王召喚は死罪。ビルギンスが殺人をしていようといまいと、もはや関係ないことだ」


魔王召喚というだけで死罪。


余罪があったとしても、死罪以上にはできないので、関係がない。


ミフォルトさんは立ち上がって、同意した。


「そうだな。魔王召喚は、極めて危険な儀式だ。権力者の中には、魔王を召喚したがる者が少なからずいる。魔王を召喚し、己の眷属けんぞくとして使役することができれば、国どころか大陸すら支配できると……そう考えるからだ。おそらくビルギンスも、そういう目的だったんだろう」


「……」


ビルギンスは答えない。


しかし、否定しないあたり、事実なのだろう。


ミフォルトさんは続ける。


「だが、魔王を召喚することなど出来はしない。儀式が失敗して、大災害を引き起こす可能性も高い。仮に召喚を成功させたとしても、魔王を手なずけるなど不可能だろう。高位の魔物を服従させるのは、口で言うほど容易くはないからな」


召喚王の異名を持つミフォルトさんがいうのだから、説得力があるなぁ……。


「死罪は妥当だ。このようなことを、ビルギンス以外もおこなっていないか、一度きっちり調査すべきだろう」


と、ミフォルトさんが提案する。


ヒニカさんはうなずいた。


「そうするつもりだ。とにかく、家宅捜索はいったん終了だな。ビルギンスを役所に連行し、しかるべき処分を受けさせる」


これで一件落着。


そう誰もが思ったであろう、そのときだった。


「……!!」


突然のことだった。


ミフォルトさんの召喚モンスター【ボックルナツハ】に捕われていたビルギンスが、急に爆発したかのような火をおこした。


ビルギンスが、火魔法を使って自爆じみた攻撃をおこなったのである。


ボックルナツハは、召喚王ミフォルトが従えているだけあって、強力な魔物。


本来なら、ビルギンスごときの攻撃ではびくともしないはずだが……


火を嫌がったのか、はたまた突然の発火に驚いたのか、ボックルナツハはビルギンスの拘束をゆるめてしまう。


そのすきにビルギンスが、ボックルナツハのツルから脱出した。


「ははは、やっと拘束が解けたぞ!」


とビルギンスが喜んだ。


そのままビルギンスは素早く走って、召喚陣の中に立った。


こちらを振り向くビルギンス。


ミフォルトさんがビルギンスを睨んで、問いただす。


往生際おうじょうぎわが悪いな。このに及んで何をするつもりだ、ビルギンス?」


「決まっているだろう――――召喚陣を起動する!!」


次の瞬間。


ビルギンスが魔力を、召喚陣へと流し込んだ。


召喚陣が光りだす。






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