第6章270話:地下2階

そのとき、ニナが言う。


「この行き止まりの壁、何かおかしいです。魔力の流れが、淀んでいるというか……」


「ん……どれどれ」


ニナの言葉を聞いたミフォルトが、壁を物色しはじめた。


すると。


「確かに、魔術的な仕掛けがあるようだ。解除してみよう」


ミフォルトがつぶやき。


壁に手を触れる。


すると、壁に魔法陣が光り始めた。


3秒後。


そこにあったはずの壁が消え、さらに下層へと続く階段が現れていた。


私は言った。


「わお……ニナ、お手柄ですね」


「え、えへへ」


ニナは微笑む。


「くっ!」


ビルギンスは憎しみのような目をニナに向けていた。


ヒニカさんは言った。


「さあ、進もう」


私たちは階段を下りていく。







地下2階。


そこにあったのは、一つの扉だけだ。


扉を開ける。


すると。


「……ここは」


ヒニカさんがつぶやく。


左右50メートルほどの広い部屋。


しかし、暗い部屋である。


ヒニカさんのランタンでは、隅々までは照らせない。


「こういうときに便利な魔物がいる」


と、ミフォルトさんが言った。


召喚陣を展開し、新たな魔物を召喚する。


その魔物は、空中に浮かぶ発光体であった。


「――――こいつは【ヒカリダマ】という魔物だ。ヒカリダマ、照明を」


「きゅ~っ!」


と、ヒカリダマが鳴き声をあげた。


次の瞬間。


LEDばりに明るい光が、ヒカリダマから放たれる。


おかげで部屋の隅々にまで明るい照明が行きわたった。


なるほど……


(召喚王、ね)


と、私は感心する。


さまざまな魔物を捕まえて、必要に応じて召喚するのが召喚士サモナー


召喚王と呼ばれるほどに極まっていると、よほど手札は豊富のようだ。


「あ!」


と、そのとき声をあげたのはルーシーさんだ。


彼女は床を見つめている。


私たちも、その床に最初に注目した。


「……魔法陣か」


と、ヒニカさんがつぶやく。


床に大きな魔法陣が描かれている。


部屋には、他にテーブルと書棚があった。


テーブルの上にはいくつかの用紙が置かれている。


書棚には本がぎっしり置かれ、置き切れない本に関しては床に積まれていた。


ミフォルトさんが床の魔法陣を見下ろして、言った。


「これは……召喚陣だな」


「魔王の召喚陣か!?」


とヒニカさんが尋ねた。


ミフォルトさんはうなずく。


「……ああ。どうやらそのようだ」


すると、ビルギンスが抗議した。


「違う!! デタラメを言うな! ミフォルト!」


「……僕の目をごまかせると思ったか? これはどう見ても、魔王の召喚陣だ!」


と、ミフォルトさんが言い切った。


ビルギンスが歯ぎしりをする。












  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る