第6章268話:執事

屋敷の玄関を抜ける。


まずはエントランス。


あちこちに扉がある。


ヒニカさんが言う。


「いろいろ調べたいところだが……やはり、まずは地下にいってみたいな」


「そうですね」


と、私は同意する。


すると、ミフォルトさんが尋ねた。


「おい、ビルギンス。地下はどこだ?」


「知らん!」


と、ビルギンスは答えた。


いや、知らないわけがないだろう。


自分の屋敷なのに。


非協力的な態度に、ヒニカさんとミフォルトさんが顔をしかめる。


そのときだった。


「ビ、ビルギンス様!?」


屋敷の執事が一人、たまたまエントランスを通りかかって、こちらを見ていた。


捕えられたビルギンスの姿に、驚愕している。


「貴様! 私を助けろ!」


とビルギンスは命令した。


しかし執事は、しどろもどろになっている。


ヒニカさんが言った。


「私は官憲だ。現在、この屋敷に家宅捜索に来ている」


「か、家宅捜索!?」


「ああ。お前はこの屋敷の執事バトラーだろう? ならば、屋敷の中のことは詳しいな? 私たちは地下への入り口を探している。案内してくれ」


とヒニカさんが命令する。


執事は、さらに困惑していた。


ビルギンスが叫ぶ。


「拒否しろ! お前は私の執事だ! 私の命令を聞け! ――――うぐが!?」


ビルギンスを黙らせるために、ミフォルトがオーガに命じて、拘束を強めた。


強く身体を握られたビルギンスが、苦悶にうめく。


執事は目を見開く。


「ビルギンス様!?」


「早く地下に案内しろ」


と、今度はミフォルトが言った。


「で、できません! 自分は、ビルギンス様の執事ですから……」


と、怯えたように答える。


きっと執事は、ここでヒニカさんやミフォルトさんの味方をしたら、あとが怖いから拒否しているのだろう。


ミフォルトさんが言った。


「ほう。ならばこのまま、お前のご主人様を握りつぶしてやろうか?」


ギガントオーガが、ビルギンスへの握りを強くした。


「ぐぐががが!! やめろ! ミフォルト! 貴様、私を殺す気か!?」


「おい。どうする? このままだとビルギンスが死んでしまうぞ?」


ミフォルトの脅迫行為に、執事がビビり散らす。


執事は言った。


「わ、わかりました! 地下へ案内いたします!」


「なっ、貴様、私を裏切るつも――――ぐががががっ!!?」


ビルギンスの言葉を、ギガントオーガがさえぎる。


「ど、どうぞこちらへ……」


と、執事が顔を引きつらせたまま、先導して歩き出す。


私たちは執事の後を追って、屋敷の奥へと進んだ。




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