第6章267話:同行

ミフォルトは私に言った。


「後で話そう。聖泉水の受け渡しだけでなく、大事な話があるんだ」


「……? はい。わかりました」


大事な話とは何か、気にはなったが、いまはビルギンスのことが先だろう。


ヒニカさんが言う。


「この通り、ビルギンスは捕えた」


ビルギンスは憤怒に満ちた顔で叫ぶ。


「離せ! この無礼者が! おのれぇ……貴様ら絶対に許さんぞ! 私の権力の全てを持って、必ず抹殺してやる!」


私たちを抹殺する前に、ビルギンスは牢獄行きになりそうだが。


まあ、負け犬の遠吠えだろう。


「エリーヌ殿」


と、ヒニカさんが言ってきた。


「私はこのまま、屋敷の地下を調べようと思う」


「はい。わかってます。……あ、そうだ!」


と、私は思いついたように声をあげた。


「せっかくですし、ミフォルトさんにも同行してもらったらいかがですか?」


「……彼に、か?」


ヒニカさんが、ミフォルトの顔を怪訝そうに見やる。


ミフォルトも困惑顔だ。


「僕が同行すべき理由があるのか? というかそもそも、君たちは何故この屋敷にやってきた? 実は、君たちとビルギンスがなぜモメているのか、よく知らないんだが」


おっと。


そういえば、ミフォルトさんには、そういう基本的なことをまだ話していなかったね。


私は手短に説明する。


「ええと、実は、私たちはこの屋敷の家宅捜索に来たんです」


「家宅捜索? 何故だ?」


「ビルギンス侯爵が、屋敷内で、魔王召喚の儀式をしている疑いがあるからです」


「……なんだって?」


と、ミフォルトは驚いた目をした。


するとビルギンスが抗議した。


「言いがかりだ! 私は儀式などやっていない!!」


私たちはビルギンスを無視する。


私は言った。


「だから、ミフォルトさんに立ち会ってもらえればと思ったんです。だってミフォルトさんは、【召喚王】の異名を取る六傑なんですよね」


「いかにもその通りだ。ふむ……たしかに僕なら、魔王召喚の痕跡を調べることができるし、実際に召喚陣があれば、それが何の召喚陣なのか分析することも可能だろう」


「はい。ですので……」


「わかった。そういうことなら、同行しよう」


とミフォルトさんは了承してくれた。


ビルギンスは苦渋の表情を浮かべる。


私はキャンピングカーを片付けたあと、ヒニカさんに言った。


「それでは、さっそく屋敷の中に入りましょうか」


「ああ」


「ちょっと待て」


と、ミフォルトが言う。


「そんなふうに、ずっとビルギンスを捕えておくのも大変だろう。僕に任せろ」


ミフォルトはギガントオーガに指示を出した。


ギガントオーガが、ビルギンスをわしづかみにする。


「うぐっ!? は、離せ! この魔物めが!」


と、ビルギンスは暴れようとするが、ギガントオーガの手を振りほどくことはできないようだ。


ヒニカさんはミフォルトに対して言った。


「助かる。貴殿の協力に、感謝しよう」


「たいしたことじゃない」


と、ミフォルトは答えた。


私は言う。


「じゃあ、今度こそ――――いきましょうか」


全員がうなずいた。


私たちは、屋敷の中へと足を踏み入れる。


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