第6章266話:鑑定

「こちらの水が聖泉水ですね」


そう告げると、ミフォルトが目を細めて、鍋を見下ろす。


ミフォルトが言った。


「そこらの水にしか見えないが……これが本当に聖泉水なのか?」


まあ、疑問に思うのも仕方ないだろう。


聖泉水は透明度が高い水だ。


しかし、見た目は、何の変哲もない水とさして変わらない。


私は言った。


「さきほども申し上げた通り、これが聖泉水であると証明する方法があります」


「聞かせてくれ」


「鑑定魔導具を使えばいい……ということです」


「鑑定魔導具……そんなものを持っているのか?」


「はい」


私はアイテムバッグからダファルダムを取り出した。


「こちらが鑑定魔導具……ダファルダムです」


名称。


そして、使い方を解説する。


ミフォルトにダファルダムを渡した。


彼は、試しに、ダファルダムを周囲の物体へと使ってみる。


「なるほど……これは確かに鑑定魔導具だ」


と、ミフォルトは納得する。


私は言った。


「では、この鍋に入った水にダファルダムを使ってみてください」


「あ、ああ」


と、ミフォルトはうなずいた。


ミフォルトはダファルダムを、聖泉水に向ける。


そしてダファルダムを使用した。


「……!!」


ミフォルトは目を見開く。


「本当に……これが、聖泉水なのか!」


弾かれたように、鍋の水を凝視するミフォルト。


次いで、こちらを振り向いて聞いてくる。


「飲めば能力の成長率が上がる水……それが聖泉水の正体なんだな!?」


「はい。ちなみに飲んでみると、不思議な光が現れるんです。明らかに普通の水ではないとわかるはずです」


「……飲んでみてもいいか? もちろん、対価は払う!」


と、ミフォルトは言ってきた。


私はうなずく。


「構いません。どうぞ」


私はガラスコップを用意し、鍋の水をすくいあげた。


ミフォルトに手渡す。


「ありがとう」


と、礼を言ってから、ミフォルトは聖泉水を飲んだ。


次の瞬間。


ミフォルトの身体の周囲にシャボン玉のような光が溢れる。


聖泉水を飲んだときに現れるエフェクトである。


「ああ……!」


ミフォルトは感動したように言った。


「なるほど。変化が起こる、というのは、コレのことか」


「はい」


ミフォルトは、完全に納得したようだ。


もう、鍋とタンクに入った水が、聖泉水であると疑ってはいない。


ミフォルトは尋ねてきた。


「これを譲ってもらえるんだな?」


「はい。ちなみに、どれぐらいの量が必要なのでしょうか?」


「それについてなんだが―――――」


と、ミフォルトが言いかけたとき。


「くっ、離せ! このっ!!」


と、ビルギンスの声が聞こえてくる。


視線を向けると、ヒニカさんが、戻ってきていた。


ヒニカさんがビルギンスの手を、後ろ手に掴んでいる。


どうやら無事にビルギンスを捕まえたようだ。





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