第6章265話:聖泉水について

「そうかそうか。まあ、フレッドみたいなやつが家族にいるなんて、そりゃウンザリするだろうからな」


ミフォルトは同情してくれる。


まあ、実際はウンザリどころでは済まなかったんだけどね。


と、そのときだった。


「あ、あの」


バネオンさんが声をかけてきた。


「はい?」


「ビルギンスが逃げたんすけど、追いかけなくてもいいんすか?」


私は慌てて視線を移す。


確かにビルギンスの姿がない。


どさくさに紛れて逃亡したようだ。


「私が追いかけてこよう!」


と、ヒニカさんが慌てて言った。


ヒニカさんが走り去っていく。


ミフォルトは言った。


「それで……だ。話を戻したいのだが」


そう前置きしてから、尋ねてくる。


「まずは聖泉水を見せてくれないか? それから、聖泉水がニセモノではないと証明する方法についても、聞かせてほしい」


「わかりました」


と、私は応じる。


聖泉水が入ったアイテムバッグは、キャンピングカーの中にある。


だから、まずはキャンピングカーを取り出すことにする。


「!!?」


アイテムバッグからキャンピングカーを取り出すと、ミフォルトが目を見開いた。


「な、なんだこれは!? 魔物……ではない、のか」


「これはキャンピングカーといいます」


「キャンピン……なんだって?」


「キャンピングカーです。私の錬金魔法で製作した、新しい馬車です」


「新しい馬車!? エリーヌさんは、錬金魔導師なのか!?」


ミフォルトは驚いて尋ねてくる。


アリスティが答えた。


「お嬢様は、超一流の錬金魔導師です。リズニス王国では、ドラル・サヴローヴェンの再来といわれ、錬金魔法部第一席メリスバトンに推薦された経験もおありです」


ミフォルトは驚愕する。


「なんだって!? それはとんでもないことじゃないか? メリスバトンなんて、誰でもなれるような地位ポストじゃないぞ!?」


「まあ、辞退しましたけどね……」


と、私は言いつつ、キャンピングカーに乗り込んだ。


アイテムバッグを取ってくる。


「こちらに聖泉水が入っています」


と、私は聖泉水が入ったタンクを1つ取り出した。


ミフォルトさんは首をかしげた。


「見慣れない容器だな……」


「これはタンクと言いまして、水を保管するための容器ですね」


「タンクというのも、君が作ったのか?」


「はい」


と、答える。


私は鍋を一つ、アイテムバッグから取り出して、石畳のうえに置いた。


次に、タンクの蓋を開けて、鍋へと聖泉水を移した。





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