第6章255話:領主邸

1時間ほどが経ったのち。


ヒニカさんとともに、私たちは領主邸へ向かうことになった。


役所をあとにする。


領主邸に向かうメンバーは以下である。


私。


アリスティ。


ニナ。


バネオンさん。


ルーシーさん。


ヒニカさん。


そしてヒニカさんの部下が二人(どちらも兵士)。


計8人だ。


先頭をヒニカさんが歩いていく。






やがて、領主邸に到着した。


ビルギンス侯爵の屋敷は、周囲を塀に囲まれている。


塀の向こうには、立派な居館と庭園があるようだ。


かなりデカい庭園である。


ここから居館まで100メートル以上はあるかもしれない。


正門には、槍を持った門衛が二人、立っている。


ヒニカさんが言った。


「監視官のヒニカだ。領主、ビルギンス殿に会いたい」


いま知ったことだが、ヒニカさんは【監視官】という役職らしい。


領主を監視するから、監視官。


そのままだね。


「少々お待ちを!」


と、右に立っていた門衛が答えた。


門衛が、屋敷の中に入っていく。


ややあってから、執事を連れて戻ってきた。


老齢であり、いかめしい顔つきの執事である。


「ヒニカ様、お久しぶりでございます」


「ああ」


と、ヒニカさんが応じる。


監視官として、ヒニカさんは、屋敷の者たちと顔ぐらいは合わせたことがあるのだろう。


「領主に会わせていただきたい。お目通り願えるだろうか」


と、ヒニカさんが言った。


しかし老執事は首を振る。


「申し訳ありませんが、ヒニカ様より、アポイントをお受けしてはいないと記憶しております。いかに監視官とはいえど、アポなしでのご面会はお断りしています」


「今回の用件に、アポは必要ない」


「……と、言いますと?」


「これだ」


ヒニカさんが令状を差し出した。


「家宅捜索の令状だ」


「……!」


老執事が目を見開く。


「今から、屋敷内の捜索をさせてもらう。あなたがたに拒否権はない。とはいえ、せめて一言、領主に断りを入れてからはじめようと思っていた。しかし、領主を呼んでいただけないなら、無理やり押し入ってでも、家宅捜索をさせてもらうしかない」


「うむむ……」


老執事がくぐもった声を漏らす。


それから、告げた。


「承知いたしました。ビルギンス様をお呼びいたしましょう。少々お待ちいただけますかな」


「ああ」


老執事が屋敷内に入っていく。


2~3分後。


老執事とともに、領主とおぼしき男がやってくる。


いけ好かない顔つきの男だ。


身なりは小奇麗だが……いかにもな悪人ヅラである。


この男が、ビルギンスか。







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