第6章252話:ヒニカと出会う

ここからはルーシーさんの仕事である。


役人に告発をするのはルーシーさんの役目だからだ。


「あ、あの、ヒニカさんはいらっしゃいますか?」


と、ルーシーさんが受付嬢へ尋ねた。


「失礼ですが……あなたがたは?」


と、受付嬢が怪訝そうに聞き返してくる。


ルーシーさんが答える。


「見ての通り、私と彼は衛兵です。こちらの方々は、同行者です。……とある事件がありましたので、ヒニカさんにお話したくて参りました」


「なるほど。少々お待ちくださいませ」


と、受付嬢が了解して立ち上がる。


受付嬢が奥の部屋へと消えていった。


やがて。


受付嬢が、一人の女性が連れて戻ってくる。


赤髪セミロング。


きりりとした黄色い瞳。


役人ということだが、どこか騎士然とした雰囲気であった。


肩から深青色のマントを羽織っている。


腰にはショートソードを携えているようだ。


どうやら彼女がヒニカさんらしい。


カウンターの向こうに立ち止まったヒニカさんは言った。


「お前たちは確か、モドルドの……」


「はい。モドルドさんの部下である、ルーシーです。で、バネオン。あと、こちらの3名は、ご同行いただいている方々です」


「ふむ。何の用だ?」


「……できれば、人前ではあまり話したくないことです。……その、個室でお願いできないでしょうか」


「ふむ」


ヒニカさんが、口元に手を当てて考え込む。


ややあって、言った。


「わかった。……ついてこい」


カウンターを出て、歩き出したヒニカさん。


私たちはヒニカさんの後に続いた。


ヒニカさんは、役所の奥の扉を開けて進む。


役所内部の廊下が続いている。


先頭を歩くヒニカさんは、ピシッとした歩き方をしている。


歩き方から真面目さが伝わってくるかのようだ。


―――廊下を途中で左に曲がり、その突き当たりまでいくと。


扉がある。


開けると、渡り廊下があらわれた。


渡り廊下の向こうには、もう一つ、建物があった。


石造りで、少し閑散とした様子の建物だ。


そこに入っていく。


その建物の一階端の部屋に案内され、ヒニカさんが扉を閉めた。


空き部屋である。


窓と、テーブルと、椅子が一つあるだけで、がらんどうとしている。


「ここなら、人は来ないし、聞かれることはない」


と、ヒニカさんが言った。


さらに続けて、尋ねる。


「で……話とはなんだ?」


「はい。実は、ビルギンス侯爵について、告発したいことがあります」


「……!」


ビルギンスを告発。


その言葉を聞いたヒニカさんが目を細める。


真剣な顔つきになった。

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