第6章251話:領都

<エリーヌ視点>



キャンピングカーを走らせる。


小1時間が経った。


領都が見えてくる。


私たちは、領都手前の砂丘あたりでキャンピングカーを下車する。


「バネオンさん、ルーシーさん、下りてきてください」


「は、はいっす!」


「はい!」


と、二人は返事をしてから、ラダーを使って降りてきた。


バネオンさんが、領都を見つめて、つぶやいた。


「お、驚いたっす。もう領都についたんすね」


「私の愛車は速いですからね」


と、私は自慢げに告げる。


キャンピングカーをアイテムバッグに片付ける。


「ではいきましょうか」


そうして領都へと徒歩で向かう。






―――クダルタス侯爵領都こうしゃくりょうと


砂漠の上に立つ都市。


都市に隣接するように巨大オアシスが存在し、オアシスの恩恵を受けて、生活を営んでいる。


私たちは、正門を抜けて街路を歩き出す。


(ここが砂漠の街ですか……)


領都には、四角い建物が建ち並ぶ。


その建物の全てが石造りだ。


足元は石畳などで舗装されておらず、むきだしの砂地である。


人口2万人程度。


街の住人。


戦士。


狩人。


衛兵。


神官。


馬やラクダを使った行商人。


……などなどが行き交う。


人は多いが、あまり活気に満ちているようには見えない。


どことなく陰鬱とした雰囲気がただよう都市だ。


「それで、ヒニカさんというのはどこにいらっしゃるのですか?」


と、私はバネオンさんに尋ねた。


私たちの目的は、まず、ヒニカさんに会うことだ。


ビルギンス侯爵の買収を受けていないと思われるヒニカさんなら、こちらの告発を聞いてくれる……というのが、バネオンさんの話だ。


「役所にいるっす。役所は、こっちっす」


バネオンさんは勝手知ったる様子で、先導してくれる。


私たちは、彼のあとにつづいて、歩いていく。


大通りを抜けて、都市の中央広場に入る。


中央広場の左の道を進むと、そこに、立派な建物があった。


やはり石造りであるが、清潔感のある建物である。


「ここが役所っす」


門衛が立っている。


ちらりとこちらを見てきた。


しかし衛兵姿であるバネオンさんやルーシーさんがいるからか。


特に呼び止めては来なかった。


私たちは、門を素通りして、役所のエントランスへ入る。


エントランスは、床も壁も天井も、全てが石造りだ。


ヤシの植物や、多肉植物など、砂漠ならではの観葉植物が、インテリアとして置かれている。


入り口からカウンターまで、赤いじゅうたんが敷かれていた。


私たちはじゅうたんを歩き、受付カウンターに向かう。





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