第6章250話:他者視点2

<バネオン・ルーシー視点>


バネオンは、視界の外を流れる景色へと目を向けた。


キャンピングカーを流れていく砂漠の景色。


バネオンは、素直に感心する。


(凄いっすね……このキャンピングカーという馬車は)


馬車なんかよりも、数段、速い。


しかも砂漠という、動きにくい大地もスイスイと移動している。


キャンピングカーの持つ潜在価値について、バネオンにもなんとなく理解できた。


(まあ、景色を楽しむ余裕はないっすけどね……)


バネオンは、いまだ自分の命が、完全に助かったわけではないと理解している。


侯爵を破滅させるまでは、エリーヌが自分たちを解放することはないだろう。


ただ、バネオン以上に、強い緊張にさいなまれているのが、ルーシーだ。


なにしろルーシーは、これから、領都の役人に虚偽の告発をしなければいけない。


失敗したらルーシーはエリーヌに射殺されるだろう。


しかし成功しても、役人にウソをついたことになり、偽告罪となる。


どう転んでも、お先真っ暗だ。


生きた心地がしないのではないか?






――――実際。


ルーシーは、バネオンが想像する心情と、当たらずとも遠からずの感情を抱いていた。


(なんでこんなことに……)


と、ルーシーはガタガタと身を震わせながら、思った。


(モドルド隊長の部下なんてやるんじゃなかった……)


自分の運命を呪いつつ……


しかし、どうすることもできない。


ルーシーは、激しく現実逃避をしたくなる思いだった。


(全てが上手くいっても、私、侯爵に殺されるんじゃないの?)


と、ルーシーは想像する。


仮に役人を騙せても、その先で、侯爵にエリーヌが敗れるかもしれない。


いや「かもしれない」ではなく、実際にその可能性が極めて濃厚だ。


確かにエリーヌやアリスティは強い。


モドルドや自分たちのようなの兵士では、まったく歯が立たない。


とはいえ、相手が大貴族となると……きっと力不足だ。


もしエリーヌたちが負けたら……


侯爵は、ゆっくりルーシーとバネオンを粛清するだろう。


それを想像すると、ルーシーは歯の根がかみ合わなくなる。


(精霊さま……っ)


と、ルーシーは砂漠の精霊に祈るポーズをした。


(今後はもう、悪いことはしません! だから、私に明るい未来をください!!)


そう必死で祈るしかなかった。




――――――――――――

おしらせ:

アリスティの過去編『フレアローズの花』の第1章が完結いたしました!

まだお読みでない方はぜひ、この機会に一度読んでみてください!

https://kakuyomu.jp/works/16817330668573896782





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