第6話220話:双眼鏡

サンドウルフを蹴散らしながら、キャンピングカーを走らせること数十分。


私たちは、サンドウルフのいない領域へとやってきていた。


(サンドウルフの縄張りを抜けた……?)


周囲には砂漠しかない。


魔物の気配はない。


うーん……でも。


縄張りを抜けたようには見えないけどな……


「サンドウルフ、いなくなりましたね」


「そうですね。いったんここで停車しましょうか」


状況確認のために、屋上から運転席のゴーレムへと指示を出して、車を停める。


私は、キャンピングカーの屋上に座り込んでアイテム錬成をおこなう。


創ったのは双眼鏡である。


30秒で完成した。


ニナが、私の錬成速度の速さに驚愕しつつも、尋ねてきた。


「それはなんですか?」


「双眼鏡です」


「双眼鏡?」


「はい。このレンズに目を通すと、遠くにあるものを拡大して見ることができます」


「……??? どういうことですか?」


「実際に使ってみればわかりますよ」


ニナに双眼鏡を渡す。


そして、私は言った。


「あそこにオアシスがあるでしょう? 双眼鏡を使ってのぞいてみてください」


「は、はい」


ニナはオアシスを見る。


その状態で、双眼鏡を目元に持っていき、のぞいた。


すると、驚きの声を上げる。


「ええ!? オアシスがすぐ目の前に見えますよ!?」


「はい。双眼鏡は、遠くを眺めることができる道具ですから」


「す、すごいですねコレ……」


ニナは双眼鏡の性能にただただ驚嘆していた。


私は、双眼鏡を返してもらう。


そして、双眼鏡をのぞきながら周囲の景色を眺めた。


「双眼鏡を使えば、この位置からでも周囲の状況確認ができます……んん?」


私は手を止める。


キャンピングカーから斜め前方の地平線付近。


そこに巨大なサンドウルフが横たわっているのが見えた。


ロード……ではない。


それよりも遥かにデカイ。


10~15メートルはあるだろうか?


どうやら砂の上ですやすやと眠っているようだ。


「何か見つけたんですか?」


「……おそらく、サンドウルフキングを」


「ええ!?」


あの巨体。


あの風格。


どう考えたって、あれがキングだろう。


ただ確証はない。


一応、クルルさんに聞いてみるか。


私は、天窓の下にいるクルルさんを呼んだ。


「クルルさん、ちょっと確認してもらいたいことがありまして、屋上まで来てもらってもいいですか?」


「え? は、はい」


クルルさんが了承する。


それからラダーを昇ってキャンピングカーの屋上まであがってきた。

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