第6章216話:屋上
乗車したクルルさんとヴァルリーさんは、案の定、キャンピングカーの異空間ぶりに驚きまくった。
で、ひとしきり二人が驚き終わった後……
私は二人を、テーブルの椅子に座らせた。
――――テーブルには四人しか座れない。
なので、もう一つ椅子を用意した。
実は、5人以上の人間が乗車したときのために、予備の椅子を錬成しておいたのだ。
その椅子は、リビングのテーブル椅子の横に接続する。
これで5人が座れるようになった。
全員で、席に着く。
私は、キャンピングカーを発進させた。
集落を離れる。
砂漠を走り出す。
快適に走行するキャンピングカー。
私はアリスティに命じて、音楽をかける。
車内に流れ出すクラシック音楽に、クルルさんとヴァルリーさんは、もはや、唖然として固まるばかりであった。
3分ほど走行する。
クルルさんが聞いてくる。
「この馬車は、エリーヌ様が、ご自身で造られたんですよね?」
「はい。私の錬金魔法で製作しました」
そう答えると、ヴァルリーさんが言った。
「あんた、本当にすごい人なんだな」
すると、ニナがはしゃいだように自慢した。
「そうなんです。エリーヌ様は凄いんですよ! なんでも作れちゃうんですから!」
ヴァルリーさんはうなずく。
「ああ。この馬車を造ったんだとしたら、お世辞抜きですごいと思うよ。世間知らずな俺でもわかる」
みんな褒め殺してくれる。
ただ、話したいことがあったので、コホンと咳払いをしてから、私は言った。
「ニナ」
「はい」
「少し用があります。屋上まで来てもらえますか?」
「え? 用、ですか?」
「はい」
私は肯定してから、天窓のラダーを下ろす。
アイテムバッグを持って、ラダーを昇る。
天窓を抜けると、キャンピングカーの屋上へ辿り着いた。
屋上に立って、周囲を見渡す。
一面の砂漠地帯。
人の気配も、街も、植物も無い。
見上げると、雲が少なく、砂漠の太陽がじりじりと照りつけている。
空気はカラっとしていて、すぐに喉がかわいてくる。
暑い。
けど、涼しい。
この涼しさは、キャンピングカーで移動しているおかげだろう。
向かい風が、髪や服をなびかせる。
風景が、視界の後ろへと流れていく。
「んしょ……っ」
後を追ってきたニナも、屋上にたどり着く。
そして屋上のうえに立つ。
「揺れるので、気をつけてください」
「はい……、っ!?」
ちょうど、少し大きくキャンピングカーが揺れた。
ニナはバランスを崩し、膝をつく。
私は尋ねた。
「大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫です」
ふたたび立ち上がる。
「身体強化魔法で、体幹を支えるイメージをしてみてください。すると、不安定な足場でもバランスを崩しにくくなります」
「や、やってみます!」
ニナが身体強化魔法を発動する。
うん。
これで転ぶことはないだろう。
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