第6章215話:戦士

10分後。


使用人の女性が戻ってきて、サンドウルフの群れを撃破したお礼を、私に渡してきた。


もらったのは緑ミスリルである。


緑ミスリルは、回復武器の素材になるミスリルだ。


とてもありがたい。


ちなみに、このとき。


倒したサンドウルフの死体に関する、事後処理についても話した。


私たちが倒したサンドウルフは、大半が集落の周りに転がったままだ。


どうせ要らないので、これらの死骸は集落に寄付すると、クルルさんに伝えた。


素材は財産となるだろうし、肉は貴重な食料となるだろう。


クルルさんは私たちに深く感謝し……


さっそく使用人を通じて、そのことを集落のみんなへ伝達した。






数時間後。


クルルさんと話す中で、サンドウルフキングに関する情報はだいたい把握した。


砂漠の状況。


砂漠の大まかな地図。


オアシスの位置や、サンドウルフロードがいるとおぼしき地帯についても、把握する。


これだけ情報があれば、問題なくサンドウルフキングを撃破できるだろう。


日が暮れ始めていたので、討伐決行は明日。


今夜は、集落の付近にキャンピングカーを取り出して、車内で休むことにした。






翌日


朝。


晴れ。


朝食を摂ったあと、いよいよ出発することにした。


私たちだけで行くのではない。


同行者が二人いる。


一人はクルルさん。


一人は男性だ。


「ヴァルリーだ。よろしく頼む」


男性が自己紹介をしてくる。


ヴァルリーさんは、20代の若い青年らしい。


ほつれた赤髪。


黄色の瞳。


服装は、下は長ズボン、上はラフな胸周りを覆う衣服を着用していた。


鍛えた腹筋と腕筋が露出している。


手には槍を持っていた。


いかにも戦士といった風情である。


「エリーヌです。こちらはアリスティとニナ。よろしくお願いします」


そう私は述べた。


クルルさんが説明する。


「ヴァルリーは、私どもの集落で一番腕の立つ戦士です。見ての通り、槍使い。前衛をお任せください」


「はぁ……でも、一番強い方が集落を離れて大丈夫ですか?」


と、私が尋ねる。


ヴァルリーさんが答えた。


「問題ない。俺以外の連中もそれなりに腕は立つ。さすがに、サンドウルフの群れに囲まれたら厳しいが、少数が相手なら返り討ちにできるだろう」


「そうですか」


と、私は相槌を返した。


ヴァルリーさんが微笑んで言ってきた。


「あんたたちの昨日の戦いぶりは見させてもらったよ。エリーヌさんと、アリスティさんだったか……あれだけのサンドウルフ相手にすごかった」


「あはは、どうも」


私は少し照れながら返した。


ヴァルリーさんが告げる。


「俺は、あんたたちほど活躍できるとは思わないが、足を引っ張るようなことはしないと約束する。だから、こき使ってくれて構わない」


「はい。頼りにさせていただきますね」


と、私は言った。


実際のところ、私は銃撃でサンドウルフを蹴散らすつもりなので、ヴァルリーさんの出番があるかはわからないのだが……


まあ、そのときがきたら働いてもらおう。


「それではいきましょうか。さあ、私の新型馬車――――キャンピングカーへどうぞ」


「はい」


クルルさんとヴァルリーさんをキャンピングカーに招き入れる。

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