第6章214話:依頼

クルルさんが、言った。


「あの、エリーヌ様」


「はい」


「水不足の件に関してなのですが、折り入って、あなたがたにお願いがございます」


「……お願い、ですか?」


私は首をかしげる。


クルルさんは話し始めた。


「水不足の原因となっている、サンドウルフキングの討伐をお願いしたいのです」


「サンドウルフキング……」


クルルさんは以下のように説明する。


砂漠の民にとって水を得ることは、当然、最重要な課題である。


今まで、そういった飲用水は、オアシスや地下水脈から確保してきた。


ところが、最近になって、サンドウルフの最上位種――――サンドウルフキングが現れ、水源地帯を支配するようになった。


結果、オアシスの近くで生活を営んでいたクルルさんたちは、住処を追われてしまったという。


「しかも――――」


と、クルルさんは続けて言った。


「サンドウルフキングは、配下であるサンドウルフや、サンドウルフロードを使役して、どんどん支配領域を広げています。そのせいで私たちが、何度住みかを追われたことか」


「……ふむ」


私は、さきほどサンドウルフの群れが襲撃してきた光景を思い出す。


もし私やアリスティが迎撃していなければ、この集落も壊滅させられていたかもしれない。


「ですが……私たちはもう、これ以上、居住地を変えることはできません」


と、クルルさんは切迫したような声で説明する。


「ここより背後は、砂岩ゴーレムの縄張りなのです。これ以上住みかを追われたら、私たちは砂岩ゴーレムの餌食になってしまいます」


サンドウルフキングの縄張り。


砂岩ゴーレムの縄張り。


その二つに挟まれる形で、この集落が存在しているわけだ。


私は尋ねた。


「国がなんとかしてくれたりはしないんですか?」


「はい。国に救援を要請したことがありますが、国は国で、魔物討伐に明け暮れているらしく、こちらに救助の手は回せないと言われてしまいました」


「なるほど……」


私は納得する。


クルルさんは言った。


「ですから、あなたがたに、サンドウルフキングの討伐を、依頼したいのです。もちろん、できる限りのお礼はさせていただきます。どうか、お願いできないでしょうか?」


クルルさんは深々と頭を下げてきた。


サンドウルフキング、ね……。


面白い。


サンドウルフの最上位種ということならば、良い素材が手に入るかもしれない。


私は承諾することにした。


「わかりました。その依頼、引き受けます」


「ほ、ほんとですか!?」


「はい」


私は、今の話を、アリスティやニナにも通訳して伝える。


それから、確認した。


「ニナもアリスティも、いいですよね?」


「勿論です。私はお嬢様に従います」


「わ、私も構いません。でも、私は何もできないと思いますが……」


二人も異論はなさそうだ。


決まりだね。


「というわけで、サンドウルフキングの討伐をさせていただきます。居場所や詳細について、お教えいただいてもよろしいですか?」


「はい!」


クルルは明るい顔で返事をした。


こうして私たちは、サンドウルフキング討伐の打ち合わせをおこなうことにした。


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