第6章213話:テントへ

私はアサルトライフルをアイテムバッグへ片付ける。


アリスティが私のもとに戻ってきた。


ニナも近づいてきて、ねぎらいの言葉をかけてくる。


「エリーヌ様、アリスティ様、お疲れ様です! すごかったです!」


「ありがとうございます、ニナ」


私は微笑んで、そう答えた。


集落の女性が近づいてくる。


「あの……」


声をかけてきた。


「サンドウルフの討伐、ありがとうございました。おかげで、私たちの集落は救われました」


「いえいえ、どういたしまして」


私は答える。


女性は言った。


「まず自己紹介をさせてください。私は、この集落の長をしております、クルルといいます」


「私はエリーヌです。こちらはアリスティとニナ。よろしくお願いします」


アリスティとニナも挨拶をする。


言葉が通じないので、私が通訳を担当した。


クルルさんは言った。


「此度の件について、是非、お礼をさせていただきたく思います。どうぞ、私の天幕テントまでお越しください」


「はい。あ、その前に……素材の回収をさせてください」


そう告げてから、私たちは討伐したサンドウルフを回収し始めた。


全部はさすがに要らないので、サンドウルフ5匹ほどの死骸を回収。


さらに大サンドウルフも回収する。


どちらも【魔法防腐剤】で、肉が腐らないように処理してからの回収だ。


そのあと、キャンピングカーをアイテムバッグに収納した。


「お待たせいたしました」


「はい。では、どうぞこちらへ」


クルルさんが先導して、歩き出す。


私たちも、クルルさんの背中を追って、歩き出した。






――――砂漠の集落。


30~40程度のテントが同心円状に配置されている。


集落の中心には砂の広場がある。


その広場に接するように、ひときわ大きなテントが存在する。


クルルさんはその玄関の前に立って、肩越しに私たちを振り返って言った。


「ここが、私の住まう天幕です。どうぞ中へ」


クルルさんが、テントの中に入っていく。


「お邪魔します」


私たちも、そう告げながら中に入った。


天幕の中には、質朴なじゅうたんが敷き詰められていた。


広さは半径15メートルぐらい。


おそらく、集落の集会としても使うため、この広さなのだろう。


奥にはおさが座るとおぼしき椅子が置かれ、使用人らしき女性が二人、控えていた。


クルルさんが、その女性の一人に声をかけ、何事かを話す。


了承した女性は、天幕の外へと出て行った。


「いま、お礼の品を持ってくるように命じました」


クルルさんがそう説明した。


私は尋ねる。


「お礼の品……つまり、水を分けていただけるということですか?」


「それは、その……」


クルルさんが言いにくそうにする。


やがて、告げた。


「実は現在集落は、深刻な水不足でして……水を提供することは、できかねます」


「そうですか……」


水不足、か。


何か事情があるのだろうか?

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