第6章212話:戦い

私の銃撃と同時、砂漠を疾駆しっくするアリスティ。


彼女は、地を蹴ってサンドウルフに接近し、蹴り殺す。


鬼神きしんのごとき蹴りを食らったサンドウルフは、まるでサッカーボールのように、数十メートルを跳んでいった。


砂丘さきゅうに顔面からめりこんで絶命する。


「はぁっ!!」


アリスティの蹴り。


手刀しゅとうでの攻撃。


それらはたった一撃でサンドウルフの肉や、骨を絶ち、命を散華さんげさせていく。


またたに、サンドウルフの死体があちこちに転がり……


サンドウルフの群れは、数を減らしていった。


「グルルゥッ!!」


上位固体とおぼしきだいサンドウルフが怒りに燃える。


あいつが群れのボスだろう。


砂丘の上から、私へと全力疾走で向かってくる。


(狙いは私か……)


地面の砂を蹴散らしながら、風を切って疾駆してくる大サンドウルフ。


この距離からでも、ひりつく戦意と威圧感を感じる。


私は緊張を覚える。


殺意を向けられるのは怖いものだ。


だけど、面白い。


胸のうちに沸き起こる熱……闘志。


その闘志が、まるで活力のごとく全身に広がっていく。


私は、集中力を一気に高めて、アサルトライフルを連射した。


「……!?」


かわされる。


銃弾を見切られた!?


なかなか手強てごわい固体だ。


「お嬢様!?」


アリスティが、大サンドウルフの動きに気づく。


私のもとへ駆けつけようとするが、どう考えても間に合わない。


(上位固体っぽいサンドウルフと一対一か。勝てるかな?)


と、私は高速で戦術を考えながら、アイテムバッグから刀剣を取り出そうとした。


が、そのとき。


「ん……?」


視界の端で、アリスティが何かを振りかぶった。


「ふっ!!!」


そして大サンドウルフに向かって投げつける。


アリスティが投げつけたのは……


なんと、サンドウルフである!


サンドウルフの死体を、剛速球ごうそっきゅうのハンドボールのごとく、大サンドウルフに向かって投擲とうてきしたのだ。


矢のごとき速さで飛んでくるサンドウルフの死骸しがいが、大サンドウルフのうしあしに直撃する。


「ギャウッ!!??」


まさか味方の死体が飛んでくるとは思うまい。


大サンドウルフは、私まであと15メートルほどといった距離で、転倒した。


「ナイス、アリスティ」


私は、心の中でサムズアップをする。


そして、倒れた大サンドウルフに、アサルトライフルの銃口を向けた。


――――発砲。


ズダダダダダダダッ、と魔弾まだんの連射が放たれる。


「グルァアアアアッ!!!?」


その弾幕だんまくは大サンドウルフの巨体に全弾命中ぜんだんめいちゅう


魔弾の威力は、大サンドウルフの硬質であろう皮膚も貫く。


大量の血飛沫ちしぶきとともに、あっという間に大サンドウルフを死に至らしめた。


「ふう……」


残るサンドウルフの殲滅せんめつも完了して、ひと息ついた。


【探知の指輪】で、本当にサンドウルフが全滅したか確かめる。


探知の指輪は、魔物の存在を探知するために使うものだが……


死んだ魔物には反応しないので、生死の判定に使うことができる。


……よし。


サンドウルフは全員、確かに死んでいるな。


「す、すげえ……!!」


そのとき、集落の民たちから歓声が上がった。


彼らは、口々に言う。


「サンドウルフを、全滅させたぞ」


「私たち、助かったのよね……?」


「すごかった」


「ロードまで倒すなんて」


「いったい何者なんだ? 本当にただの旅人なのか?」


安堵あんどの声。


それから、賞賛の声と眼差しが、私たちに向けられる。

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