第6章207話:サボテン

砂漠を走る。


リビングの椅子に座るニナが、窓の外を眺めている。


「あ……!」


と、声をあげた。


「何か、見慣れない植物が生えています!」


私はふと窓の外を眺めた。


だだっ広い砂漠。


そこにいくつかの緑が見える。


トゲのついた、奇怪な形の植物。


「ああ、あれはサボテンですね」


と、私は答えた。


「サボテン、ですか?」


「はい。多肉植物という種類の植物ですね。茎や根にたっぷりと水分を貯められるので、砂漠のような厳しい環境でも生息できるんですよ」


「へえ……」


ニナは感心する。


私は、ぽつりと言った。


「せっかくですし、記念に採取していきますか」


そして、キャンピングカーを停車する。


三人で外に出た。


サボテンが群生するポイントに近づく。


大小さまざまなサボテンが思い思いに生えていた。


にょきにょきして可愛い。


「近くでみると、すごく変な形をしてますね」


と、ニナは感心する。


アリスティが言ってきた。


「お嬢様。サボテンの近くの土には、魔物が潜んでいることがあるので、ご注意ください」


「ん……そうなんですか」


ならば、探知して、安全を確認したほうがいいだろう。


私は、アイテムバッグから探知の指輪を取り出す。


探知をおこなってみる。


半径1キロメートルの魔物の位置を把握。


探知の指輪は、地面の下の魔物も調べられる。


うん……何もいない。


ただ。


「あそこに一匹、いるようですね」


斜め後方……


砂丘の上に、こちらうかがう魔物の姿がある。


コモドドラゴンのような大きなトカゲ型の魔物である。


アリスティが言った。


「砂トカゲですね」


私は尋ねる。


「ご存知なんですか?」


「はい。速いし火も噴いてきますが、そこまで強くはありません」


「ふむ」


まあ、私たちが戦闘で負けることなど、万に一つもないだろうけど。


一番聞きたいことは……


「あれ……食べられますか?」


私が尋ねると、アリスティがうなずいて言った。


「食べられますよ」


「美味しいですか?」


「はい。肉は柔らかいですし、ジューシーです」


なるほど。


わかった。


倒してゲットしよう!


今日のお昼ごはんはヤツで決まりだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る