第4章139話:不老の霊薬、飲む

屋敷の一室。


私は、ある物品の解析をおこなうことにした。


その物品とは【不老の霊薬】である。


ドラル・サヴローヴェンの宝物庫から入手したレアアイテム。


宝物庫から持ち出して以来、ずっとアイテムバッグに眠ったままだった。




解析方法は単純だ。


鑑定魔導具ダファルダムを使って解析するだけである。


私は、【不老の霊薬】をテーブルの上に置いた。


霊薬といっても、半分にしたうえで小瓶に分けてある。


ユレイラさんいわく、半分の霊薬ならば3000年の寿命延長が実現されるとのことだが……


これを確かめるため、私はダファルダムを使用してみる。


すると、以下のような鑑定結果が表示された。



◆◆◆


【半不老の霊薬】

3000年、寿命が延長する。

肉体の老化が一時停止する。


◆◆◆



……ふむ。


やはり、この黄金ポーションは、本物の霊薬だったらしい。


さすがドラル・サヴローヴェンだね。


そしてユレイラさんがかつて語っていた通り、【不老の霊薬】は、一杯飲めば不老となり、半分の場合は3000年の寿命延長となるらしい。


名称も【半不老の霊薬】になるようだ。


「とりあえず飲んでも大丈夫そうかな」


私はそう結論づける。


そしてアリスティを部屋に呼びつけることにした。


「……というわけで、ダファルダムによって、霊薬の安全確認ができたので、さっそく飲みましょうか」


「承知いたしました」


と、アリスティは賛意を示した。


「では、私から飲ませていただきます」


アリスティがくいっとポーション小瓶をあおる。


黄金の霊薬がアリスティの口の中に入っていく。


飲み干した。


すると、アリスティの身体に、黄金の光玉がぽわぽわと溢れた。


「これは……」


アリスティが目を見開いている。


私は尋ねた。


「ど、どんな感じですか、アリスティ?」


「これは……すごいですね。頭の中に情報が浮かんで……」


「情報?」


「飲んでいただければ、おわかりいただけるかと思います!」


「ふむ……では、私も飲んでみますね」


くいっと、瓶をあおる。


黄金のポーションが体内へ入ってくる。


―――瞬間。


内なるエネルギーの奔流が駆け巡った。


「……!?」


アリスティのときと同じように、身体の周りに光玉があふれだす。


さらに頭の中に、情報が流れ込んでくる。




◆◆◆


【不老・小】の獲得。

3000年、寿命が延長する。

肉体の老化が一時停止する。

老化は2700歳から再開する。


◆◆◆




なるほど、アリスティはこの情報を視たのか。


――――私は、得られた情報を整理する。


私の寿命は、もともと100~200歳ぐらいと推定される。


そこから3000年延長したことになるから……


現在、3200歳前後が寿命となったわけだ。


さらに肉体については老化が停止し、現在20歳の若さが持続される。


老化が始まるのは2700歳からになるようだ。


だいたいこんなところか。


「なるほど。確かにこれは霊薬ですね」


私が告げる。


アリスティは言った。


「はい。これはいわゆるスキルアイテムと呼ばれるものですね」


「スキルアイテム……」


「使用したり摂取したりすると、スキルを習得できるとされる伝説のアイテムです」


ああ……そういえばそうかもしれない。


【不老・小】というのはスキルなのだ。


おそらく常時発動しているパッシブスキルというやつだろう。


私は感心する。


(スキルなんて、本当にあるんですね)


この異世界では、魔法は一般的だ。


一方、スキルはそうではない。


スキルは『神や精霊が与えた奇跡』とされ、伝説視されている。


スキルの習得方法は大半が不明。


ただ、スキルアイテムから習得する方法はよく知られている。


とはいえ、スキルアイテム自体が、古い文献にしか出てこない代物なので、実在が疑問視されていたのだが……


霊薬の存在は、まさにスキルアイテムが実在することの証明といえよう。


「とにかく、これで私たちは3000歳以上は生きることになりましたね」


「はい」


「改めて……末永くよろしくお願いします、アリスティ」


「こちらこそ。よろしくお願いします、お嬢様」


私とアリスティは、微笑みあいながら、そう言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る