第4章138話:戦利品


<女王視点>


エリーヌが去っていった後、私室に移動した女王は静かにつぶやいた。


「悪くない話じゃったな」


さきほどエリーヌと話した内容についての感想である。


ヒューネは答える。


「ええ。悪くないですね。……エリーヌが間者や工作員でなければ、ですが」


「フレッドの死と、国外追放の話が本当ならば……工作員ではないじゃろう。そしておそらく、エリーヌが言ったことは真実じゃ」


だとすると、一気に別の展望が見えてくる。


「エリーヌを取り込んだほうがいいな」


女王はそう見解を述べた。


ヒューネも否定はしなかった。


エリーヌ本人の才能には、もちろん注目している。


だが何より、エリーヌに付随するアリスティの力に、二人は強く注目する。


アリスティ・フレアローズが仲間になれば、イグーニドラシェルを欠いた穴を埋められるからだ。


「イグーニドラシェルが死んだと聞いたときは、この世の終わりかという気分になったが……意外に、悪くない流れかもしれんな」


ルシェス、ヴァンブルの権益は王家の手中に収まった。


これでアリスティが味方につけば、以前よりも強い王家が誕生するかもしれない。


女王はヒューネに命令した。


「エリーヌが工作員であるかどうかの調査は続行しつつ……それと並行して、エリーヌたちを囲い込む準備を始めよ」


「承知しました」


女王の命令のもとに、ヒューネが動き始めた。





<エリーヌ視点>


2日後。


昼。


王女の屋敷。


私にあてがわれた部屋。


ベッドのふちに座って、私は、今回の旅で得られたものを確認していた。


まず、ドラル遺跡から回収できたもの。


これは文献がほとんどだ。


財宝類は放置してきたからね。


ドラル遺跡の財宝たちは、無事に、国の宝物殿へと送られることになるそうだ。


(文献は、後日、じっくりと読み込みたいものだね)


ただ文献については旧リズニス語で書かれている。


私は旧リズニス語は読めない。


後日、シャーロット殿下に翻訳してもらうことにしよう。


(あと、手記と遺稿だけど……)


ドラル・サヴローヴェンが残したとされる手記と遺稿。


もう要らなくなったということで、殿下から私に譲渡された。


これについても、一応、読んでおきたいと思う。


錬金魔法に関する重要な情報が書かれているかもしれないからだ。


ただ、やはり旧リズニス語なので、シャーロット殿下に頼ることになるだろう。


「……で、次は戦利品の確認っと」


私はアイテムバッグから、戦利品を一つずつ取り出していく。


イグーニドラシェルが持っていた装備、アイテムなどを、根こそぎゲットした。


さすが英雄のアイテムバッグは、豪華なレアアイテムが盛りだくさんである。


傭兵たちの持っていた物も、なかなか上等なものが多い。


よくわからないアイテムは、ダファルダムを使って鑑定し、効果を特定する。


さっそく鑑定魔導具の大活躍だ。


結果、目を見張るアイテムは、以下の三つだった。



◆◆◆


【探知の指輪】

半径1000メートル以内の人、魔物などの位置が探知できる魔法の指輪。


【精神攻撃無効の石】

精神系の魔法を無効化する石。

精神系の魔法とは、魅了、恐慌、幻覚、憤怒など、精神に作用する状態異常魔法をさす。

所持しているだけで効果を発揮する。


【封印無効の石】

魔法の封印を無効化する石。

自身の魔法が封印されなくなる。

所持しているだけで効果を発揮する。


◆◆◆




心の底から言いたい。


石がヤバい!


マジで超絶ありがたいよ、この二つ!


(精神系無効と、封印無効は、前世の知識じゃたぶん作れないからね)


それでいて、食らったら致命的な魔法だ。


精神魔法と封印魔法は。


ここで無効化できる石を手に入れることができたのは、大きすぎる。


しかも所持しているだけで無効化できるなんて、神アイテムだ。


「探知の指輪も、今後重宝できそうだね」


私は満足顔でそう言った。


なお、不要なアイテムや装備も結構あったので、それらは後日売却することに決めた。


特に英雄装備に関しては、要らないものが多い。


たとえば攻撃魔導師の専用装備とか。


こういう武具は、錬金魔導師である私や、アリスティには適さないんだよね。


なので、国かシャーロット殿下に献上してもいいな。


そもそも英雄の装備品はリズニスの財産でもあるらしいし、ある程度は返してあげたほうが、余計な反発を買わなくて済むだろう。


気になるアイテムをいくつか貰ったら、あとは献上するか、買い取ってもらうことにしよう。

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